遺産放棄と相続放棄の違いは?借金がある場合の手続きや書類を徹底解説

「遺産放棄と相続放棄って何が違うの?一緒ではないの?」

確かに似たような単語ですが、実は意味が少し異なってきます。さらに、これらを勘違いして使ってしまうと思わぬリスクにも繋がりますのでしっかりと理解することが大切です。

そこでこの記事では、

  • 遺産放棄と相続放棄の違い
  • 遺産放棄(or相続放棄)を行うケース
  • 遺産放棄(or相続放棄)を行う際の注意点

について図解を用いながら分かりやすく解説しています。

さらに、「手続きの流れ」や「手続きにかかる費用」についても解説していますので、遺産放棄・相続放棄について分からないことがなくなるはずです。

遺産放棄と相続放棄について理解し、トラブルを起こすことなく手続きを済ませるために、この記事がお役に立てば幸いです。

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遺産放棄(財産放棄)と相続放棄の違い

遺産放棄(財産放棄)と相続放棄の違い

相続を希望しない場合の手続きには、遺産放棄相続放棄の2種類があります。
遺産放棄は、「誰がどの財産を相続しないか」を相続人間の協議で決める方法です。
一方の相続放棄は、家庭裁判所を通した法的効力のある方法です。

名前こそ似ているものの、2つの方法は行うべきケースや特徴が異なります。選択を誤って不利を被らないためにも、遺産放棄と相続放棄の違いを理解しましょう。

違い①:遺産放棄(財産放棄)では借金の請求を拒否できない

遺産放棄と相続放棄の違いの1つ目は、借金の請求を拒否できるかどうかです。遺産放棄だと借金の請求を拒否できず、相続放棄だと借金の請求を拒否できます。

遺産放棄をして財産を相続しない意思を表明し、それを「遺産分割協議書」に記しても、法律的に相続権を放棄したことにはなりません。そのため、被相続人の借金を巡って債権者から借金返済を請求されたとしても拒否できません。遺産放棄は「誰がどの財産を相続しないか」を決める相続人間の話し合いにすぎないことを覚えておきましょう。

法律的に相続人から外れるには、遺産分割協議による遺産放棄ではなく、家庭裁判所で相続放棄の手続きを取る必要があります。

違い②:相続放棄をするには法律上の手続きが必要

遺産放棄と相続放棄の違いの2つ目は法律上の手続きが必要かどうかです。遺産放棄は法律上の手続きが必要なく、相続放棄は法律上の手続きが必要となります。

相続放棄は、相続権を正式に放棄するための法的な手続きを指すため、相続放棄申述書を家庭裁判所に提出するなどの手続きが必要となります。被相続人に多額の借金が発覚した際に相続人が債務を免れるためには、遺産放棄ではなく相続放棄の手続きが必要です。

遺産放棄はあくまで「誰がどの財産を相続しないか」を決める話し合いであり、相続人間での同意が得ることが目的です。手続きも比較的簡単で、「遺産分割協議書」を作成して相続人全員がサインするだけで済みます。 

「自ら遺産を相続しないと決めること(遺産放棄)」と「法的に相続権を放棄すること(相続放棄)」は違うと、覚えておきましょう。

遺産放棄(財産放棄)は「生前に財産を受け取っている場合」に公平性を保つために有効

遺産放棄(財産放棄)を行うケースは「生前に財産を受け取っている場合」

遺産放棄は、相続人間の公平性を保つために行います。特に、特定の相続人が生前贈与を受けているケースでは、遺産放棄が有効です。

長男、次男、三男の三人の相続人がいるケースを例にとって考えてみましょう。被相続人である亡父から、長男のみが生前贈与で現金1,000万円を受け取っていました。そうすると、生前贈与のことを知った次男と三男は「不平等だ」と不満をもってしまいます。

被相続人から残された財産は、現金2,000万円でした。この財産を次男と長男に分配することで、公平な相続が可能となります。そのためには、長男の遺産放棄が必要です。「生前に贈与を受けていた」ことを理由に次男と三男が長男を説得し、長男が遺産放棄に同意します。遺産分割協議書にその旨を記載し、三人全員がサインします。こうして次男と三男が1,000万円ずつを相続することで、三兄弟それぞれが1,000万円を受け取った形となります。

被相続人から残された財産は、現金2,000万円でした。この場合、長男が遺産放棄をして次男・三男が1,000万円ずつ遺産を受け取ることで、公平な分配が可能になります。このように、相続人全員に平等に利益を分配する場合に、遺産放棄はおすすめです。

遺産放棄をする際は、必ず遺産分割協議書を作成し、相続人全員がサインをしましょう。

遺産放棄ではなく相続放棄を行う3つのケース

遺産放棄ではなく、相続放棄を行うべきケースとしては、下記の3つが挙げられます。

  • プラスの財産よりも負債(借金)の方が多い場合
  • 遺産相続のトラブルを避けたい場合
  • 特定の一人に全て相続させたい場合(事業継承など)

プラスの財産よりも負債(借金)の方が多い場合

プラスの財産よりも負債(借金)の方が多い場合

相続人が相続するのは、預金や不動産などのプラスの財産だけではありません。被相続人に借金がある場合には、相続人が借金を返済しなくてはなりません。被相続人が借金の連帯保証人である場合も同様です。

このようなケースで借金の返済を免れるために、相続放棄が有効です。ただし、一度相続放棄をしてしまうと、プラスの財産も受け取れなくなることに注意しましょう。

また、相続放棄をしても借金の返済義務自体が消えるわけではなく、次順位の相続人に相続権が移ります。兄弟全員で亡父の財産に対する相続放棄を行っても、他の親族が債務を引き継ぐことにも注意してください。

遺産相続のトラブルを避けたい場合

相続権を放棄することで、トラブルを避けられるメリットもあります。次のようなケースで相続放棄をしておくと、遺産分割協議に参加する必要がなく、トラブルを避けられます。

次のようなケースで遺産相続を行うと、手続きが煩雑でトラブルになりかねません。

  • 相続人が外国など遠隔地にいる場合
  • 遺産が少ない・活用できそうな遺産がない場合
  • 相続人間で仲が悪く、遺産分割協議ができない場合

遠隔地にいるために他の相続人との話し合いが難しい場合には、相続放棄をすることで遺産協議に参加する必要がなくなります。協議が煩わしいと感じた人は、早々に相続放棄してしまうのも一つの手です。

遺産があまりにも少なくて相続手続き費用への対価が乏しい場合や、自分にとって価値のある遺産がない場合にも、相続放棄が有効です。相続放棄を行うことで、遺産相続における煩雑な手続きや、相続人間の遺産協議とそれに伴うトラブルを避けられます。

このように、借金があるというマイナスの状況に限らず、早々に相続権を放棄してトラブルを避けたいというケースでも、相続放棄はおすすめです。

特定の一人に全て相続させたい場合(事業継承など)

特定の一人に全て相続させたい場合(事業継承など)

事業継承などで一人の相続人に全てを相続させたい場合にも、相続放棄が有効となります。被相続人が事業者であり、すでに後継者が決まっている場合には、その一人に遺産の多くを継がせた方が事業も安定しやすいです。

遺産放棄でも特定の相続人の取り分を増やせますが、法的効力の強い相続放棄を行うことで、のちのトラブルを避けられます。

口約束だけで相続の分配や集中を決めてしまうと、あとで誰かの意思が変わってトラブルに発展するケースもあります。なお、遺産放棄でも特定の相続人の取り分を増やすことは可能ですが、あくまで遺産協議の上「遺産分割協議書」の作成が必要です。

このように、相続を集中させたい人が決まっている場合には、相続放棄がおすすめとなります。

遺産放棄(財産放棄)を行う上での2つの注意点

新たに遺産が判明した場合のことを決めておく

遺産放棄を行ったあとで新たな遺産が見つかった場合には、相続人間でトラブルに発展することもあります。トラブルを避けるためには、最初の遺産分割協議で取り決めを行っておくのがおすすめです。

新たに判明した遺産に対して、いちいち遺産協議を行うのは面倒だと思う相続人もいるでしょう。そこで、遺産放棄を行う際に、新たな遺産が判明した場合の取り決めを行うことが重要です。

遺産が新たに判明するケースも想定し、最初の遺産分割協議を行いましょう。もし新たに遺産が判明した場合は誰が相続するかを話し合い、その旨を遺産分割協議書に明記するのがポイントです。例えば、「新たな遺産または債務が判明した場合は、相続人●●が全ての遺産及び債務を取得し承継する。」のような一文を記載するだけで、再協議の必要がなくなります。

借金の支払いを拒否することができない

遺産放棄の重要な注意点としては、借金の支払いを拒否できないことも挙げられます。債権者は、債務者の相続人にも返済請求できる権利を持っています。たとえ遺産分割協議で「借金を相続しない!」と宣言し、その旨を遺産分割協議書に記載したとしても、債務を免れたことにはなりません。被相続人から相続した債務を免れるためには、相続権自体を放棄する相続放棄の手続きが必要です。

プラスの遺産を受け取らない代わりにマイナスの遺産も相続しない手続きを「法的に」行うことが、故人の借金を引き継がない唯一の方法です。遺産放棄を選択する際には、まだ借金の返済義務が残っていることを、忘れないようにしましょう。

遺産放棄(財産放棄)の手続き|口頭ではなく書類にサインをする

遺産放棄の手続きは、遺産分割協議を経て遺産分割協議書にサインするという流れで行いましょう。口頭の取り決めでは、「やっぱりこの遺産を相続したい」と後で態度を変える相続人が出る可能性もあります。また、誰がどの遺産を相続するのかも、口頭だけでは分かりづらいものです。

そこで、遺産分割協議書という書類を作成します。誰がどの遺産を相続し、誰がどの遺産を放棄するのかを話し合った上で、その内容を遺産分割協議書に記載します。署名し、実印を押した上で、相続人の人数分を印刷し、各自で保管しましょう。

こうすることで、誰かが相続の意思を変更するなどのトラブルを防ぐことができます。相続放棄とは違い法的な手続きを踏む必要のない遺産放棄ですが、相続人間の合意は必要不可欠です。必ず遺産分割協議書を作成し、署名と実印も忘れないようにしましょう。

相続放棄を行う上での9つの注意点

①相続放棄の期限は3ヶ月(亡くなったことを知ってから)

相続放棄の期限は3ヶ月(亡くなったことを知ってから)

相続放棄には「3ヶ月以内」という期限があります。被相続人が亡くなったことを知ってから3ヶ月以内に、手続きを行いましょう。被相続人が亡くなった日からではなく「亡くなったことを知った日から3ヶ月」というのがポイントです。期限を過ぎてしまうと「単純承認した=相続した」と見なされ、相続放棄ができなくなります。

また、3ヶ月の期間内でも遺産を勝手に処分してしまうと、遺産相続をしたとみなされて相続放棄ができなくなります。不動産の取り壊しや譲渡も「相続」と見なされるので要注意です。

ただし、「財産調査をしても借金の存在がすぐに分からなかった」場合や「被相続人と血は繋がっているものの、ほとんど面識がなく疎遠だった」場合など、特別なケースでは期限の延長が認められることもあります。この場合には煩雑な手続きが必要になる手続きが煩雑になること、あくまでも原則の期限は3ヶ月であることを覚えておきましょう。

相続放棄を行う場合には、3ヶ月という期限を頭に入れた上で、できるだけ早めに書類を揃えるようにしましょう。

②生前に相続放棄はできない

原則として、生前に相続放棄を行うことはできません。生前に他の相続人から相続しない意思を明記した「念書」をもらっているとしても、法的な効力は認められません。生前にどのような取り決めや手続きをしてもそれは相続放棄と認められず、生前に相続権を放棄することは不可能です。

そのため、特定の相続人に相続させたくない場合には、遺言書の作成や生前贈与が行われるケースも多いです

ただし、相続人に認められる最低限の遺産の取得割合である「遺留分」というものがあります。被相続人や他の相続人が相続をさせたくない人Aがいる場合に、遺言書の作成や生前贈与を行っても、Aは遺留分を請求できる点に注意しましょう。

③相続放棄しても生命保険金は受け取れる

相続放棄をすると、生命保険金も受け取れないのではないかと不安な人もいるでしょう。相続放棄で失われるのは「亡くなった人の財産に関する権利と義務」に該当する財産です。生命保険金は受取人が保険会社から受け取る「受取人固有の財産」であり、相続財産ではありません。そのため、相続放棄をしても生命保険金は受け取れます。

ただし、受取人が亡くなった本人に指定されている場合や、亡くなった人が契約者のみに該当する解約返戻金の場合は、注意が必要です。これらの場合、生命保険金は相続財産とみなされるため、相続放棄をしてしまうと受け取れません。

相続放棄をしても生命保険金を受け取れるのは、「受取人が相続放棄をした人に指定されている場合」と「受取人指定はないものの法定相続人=受取人と定められている場合」に限ります。

④一度相続放棄をすれば撤回できない

相続放棄をするかどうかは慎重に決める必要がありますが、一度相続放棄をすると、それを撤回することはできません。相続放棄の手続きでは、家庭裁判所に「相続放棄申述書」を提出します。これが一旦受理されると、撤回ができなくなります*

そのため、相続放棄後に巨額の遺産が見つかったとしても、それを相続する権利はありません。「借金を引き継ぎたくなかったので相続放棄をしたが、負債額を遥かに上回る財産が発見されたので撤回したい」と申し出ても、相続放棄を撤回することは不可能です。

この原則を踏まえ、相続放棄を行うかどうかは慎重に決める必要があります。

補足*「相続放棄の撤回が認められたケース例」
・未成年者が法定代理人の同意なしに相続放棄手続きを行った場合

・資産を誤って認識していた場合(ハードルは高い)

⑤他の相続人とトラブルになることがある

他の相続人とトラブルになることがある

相続放棄は、マイナスの遺産も受け取らなくて済むため、被相続人に借金がある場合などに有効です。しかし、一人の相続人が相続放棄をしても借金の返済義務自体が消えるわけではありません。

相続放棄は、親族間でのトラブルを引き起こすこともあります。それは、一人の相続人が相続放棄をしても、借金の返済義務自体が消えるわけではないからです。

例えば、負債を抱えたまま亡くなった被相続人の配偶者もすでに亡くなっており、相続人が二人の息子だったとしましょう。長男が相続放棄をしたため、次男が債務を負うことになりましたが、次男も相続放棄をしました。すると、相続権は第2順位である被相続人の父母に移ります。もし被相続人の父母も亡くなっている場合には、第3順位である被相続人の兄弟姉妹に移ります。つまり、当初の相続人であった息子たちにとっての叔父や叔母が、債務を引き受けなくてはなりません。

このように、相続放棄によって親族間でのトラブルに発展する可能性も考慮しましょう。相続放棄をする前に次順位の相続人に報告・相談をするのが、賢明な判断です。

⑥債権者が知人の場合トラブルになる

相続放棄を行うと、相続人同士だけではなく、債権者とのトラブルが起きる可能性もあります。特に債権者が知人の場合には、要注意です。知人だからという理由で利息もつけずにお金を貸している債権者でも、せめて貸した分のお金を返済してもらわないと困るでしょう。

もし相続人全員が相続放棄をしてしまったら、債権者は一族に対して反感を抱いてしまいます。相続人間・親族間はもちろん、債権者とのこうしたトラブルも見越した上で、相続放棄を選択してください。

⑦相続人全員が相続放棄をしたら財産は国のものになる

相続人全員が相続放棄をした財産は、特別縁故者*がいない場合国のものになります。相続人が相続放棄をし、後順位の相続人も全員が相続放棄をした場合「相続人不存在」の状態となります。この状態になると、財産は国庫返納となります。ただし、債権者がいる場合には債権者に分配されます。

また、国への返納や債権者への分配は、家庭裁判所で選定された相続財産管理人が行います。利害関係者である債権者がいる場合には、債権者が選定手続きに関わります。

*特別縁故者…被相続人の療養看護を務めた、特別の縁故があった人物などのこと。祖法定相続人がいない場合に財産を受け取ることができる。

⑧生前贈与を受け取っていた場合、財産を返還することになることもある

生前贈与を受け取っていた場合、財産を返還することになることもある

相続人が生前贈与を受け取っており、被相続人の債務が発覚した場合には、財産を返還することもあるので要注意です。これは「詐害行為取消権」と呼ばれる債権者の権利で、生前贈与を取り消すことができます。この権利がなければ、債務がある場合でも生前贈与を行った上で死後に相続放棄することで、借金を帳消しにできてしまいます。

ただし、生前贈与を受け取ったからといって相続放棄ができないわけではありません。生前贈与自体が相続放棄を制限するのではなく、債務が発覚した場合は受け取った贈与を返還しなくてはならないことがある、という認識を持っておきましょう。

⑨相続放棄した土地・家は新しい所有者が決まるまで管理を行う必要がある

相続放棄した財産が土地や家などの不動産の場合、新しい所有者が決まるまでの間は、相続放棄をした相続人が管理しなくてはなりません。後順位の相続人が誰もいない場合には唯一の相続人に、相続人全員が相続放棄した場合には最後に放棄した人に、管理義務が生じます。

もし財産がきちんと管理されずに毀損などが生じると、債権者などの第三者が不利益を被る可能性もあります。その結果、相続放棄者の義務を怠ったとして、損害賠償を請求されるリスクもあります。遠方にある土地などで管理が難しい場合には、家庭裁判所にて相続財産管理人を選任しましょう。

相続放棄の手続き・流れ

遺産放棄と相続放棄の違いや相続放棄の注意点について解説してきました。

ここからは相続放棄の手続きや流れについて解説します。詳しい方法は以下の記事を参考にしていただけると幸いです。

相続放棄の手続き・流れ

1.財産を確認する

相続放棄を行う上ではまず、相続対象となる財産を確認します。借金などのマイナスの財産の額が、預金や不動産などのプラスの財産を明らかに上回る場合には、相続放棄を行うべきです。

2.必要書類を用意する

相続放棄をすると決定したら、必要書類を用意しましょう。相続放棄の手続きにおいては、「相続放棄申述書」を提出する必要があります。他に必要となる書類は、下記の通りです。

  • 被相続人の住民票除票または戸籍の附票
  • 相続放棄を申し立てる人の戸籍謄本
  • 収入印紙
  • 連絡用郵便切手

上記に加え、被相続人と申述人の間柄によっては、追加書類の提出を求められるケースもあります。期限内に提出できるよう、随時用意しましょう。

3.家庭裁判所へ書類を提出する(郵送可)

続いて、用意した書類を家庭裁判所に提出します。することになります。相続放棄の申述人が自ら持参、または郵送で必要書類を提出しましょう。

被相続人が亡くなったことを知った日から3ヶ月以内に提出までのステップを終える必要があります。また、申述を行い一旦受理されてしまうと、相続放棄の取り消しはできないのでご注意ください。

4.家庭裁判所から「照会書」が郵送される(2週間程度)

必要書類を提出してから2週間程度で、家庭裁判所から「照会書」が自宅に送られてきます。送られてきた照会書には、質問事項が記載されています。

照会書は、申請者が「自らの意思」で「合理的な理由のもと」に相続放棄をするのかを、裁判所側が確かめるための質問票です。

5.照会書に必要事項を記載し返送する

全ての質問事項に答えたら、照会書を家庭裁判所に返送しましょう。照会書の記入に加え、家庭裁判所に出頭し質問に答える「審問手続」が必要な場合もあります。

6.相続放棄が認められると「相続放棄申述受理通知書」が郵送される

質問への回答を受け、家庭裁判所が審理を行います。審理の結果相続放棄が認められると、「相続放棄申述受理通知書」が自宅に郵送されます。これで相続放棄の手続きは完了となり、一度受理されると相続放棄の取り消しはできません。

相続放棄にかかる費用

相続放棄にかかる費用

自分で手続きする場合の費用は3,000円~4,000円

相続放棄の手続きを自分で行えば、3,000程度の費用がかかります。費用の内訳は、下記の通りです。

手続き内容 費用
申述書に貼る収入印紙代 800円
被相続人の戸籍謄本 450円
被相続人の除籍謄本 750円
被相続人の住民票 300円
申述人戸籍謄本 450円

自ら手続きをすると、相続放棄の手続き費用を安く済ませられるメリットがあります。

しかし、煩雑な手続きの中で書類の不備や記入ミスなどが生じると、期限内に相続放棄を済ませられず、借金を相続してしまう可能性もあります。期限内に手続きを終える自信がないという人は、司法書士や弁護士に依頼する方が確実と言えます。

司法書士に依頼する場合の費用は3万円~5万円

司法書士に相続放棄の手続きを依頼する場合には、3〜5万円の費用がかかります。

司法書士と弁護士の違いは代理権の有無であり、押印や書類作成など、代理で行えない作業もあります。そのため、依頼者自らが行わなければならない手続きもあり、司法書士はあくまで手続きのサポートをすることになります。

弁護士に依頼する場合よりも費用を抑えられるものの、弁護士への依頼よりも安いですが、期限が迫っている時間に余裕のない場合には弁護士に依頼する方が確実とも言えます。

弁護士に依頼する場合の費用は5万円~10万円

弁護士に相続放棄の手続きを依頼する場合には、5〜10万円の費用がかかります。弁護士は代理権を持っているため、依頼人の代わりに相続放棄の手続きを全て済ませることが可能です。また、特別な事情がある場合には「事情説明書」を作成することで、期限が過ぎていても相続放棄の手続きを進められます。

弁護士に事情説明書の作成もお願いすれば、3ヶ月の期限を過ぎそうな場合には、弁護士に事情説明書の作成も依頼しましょう。相続放棄が認められる可能性も高いでしょう。

遺産放棄(財産放棄)と相続放棄の違いについてのまとめ

今回は、遺産放棄と相続放棄の違いについて見てきました。遺産放棄を行う場合には遺産分割協議書を作成する必要があり、相続放棄の場合には家庭裁判所に申述を行う必要があります。

プラスの財産より借金が多い場合には相続放棄が有効ですが、相続人間や債権者とのトラブルにも注意しましょう。相続放棄の手続きに不安を感じている人や期限内に確実に手続きを終えたい人は、専門家に相談するのもおすすめです。

専門家をお探しの方はsouzoku-info@jp-better.comまでご連絡いただけますと幸いです。

監修者情報

監修者:德永和喜

徳永 和喜(公認会計士)

高校卒業して就職後、一念発起して公認会計士試験合格。

2018年から株式会社better創業メンバー取締役としてbetter相続Webアプリケーション開発に従事。公認会計士/税理士とエンジニアを兼務しながら、相続税申告の案件にも携わる。

2022年10月、経営統合により辻・本郷ITコンサルティング株式会社の執行役員就任。better相続事業部長として、自分で相続税申告や相続登記を行う方へより良いサービスの提供を目指している。

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