相続税申告書第11・11の2表の付表1(小規模宅地等についての課税価格の計算明細書)と別表1の書き方などを解説
相続税申告書の第11・11の2表の付表1は、小規模宅地等の特例を適用する際に作成します。別表もあり、該当する場合は作成が必要です。
今回は相続税申告書の第11・11の2表の付表1や別表1の書き方などを解説します。
なお、『better相続申告』を使い、フォームに情報を入力すると相続税申告書が自動で作成されます。また、税額計算なども自動で行われるため、申告書を作成する時間や手間を大きく削減することができます。
目次
相続税申告書第11・11の2表の付表1とは
相続税申告書の第11・11の2表の付表1は小規模宅地等についての課税価格の計算明細書となっています。
また、相続税申告書の第11・11の2表の付表1には、(別表1)、(別表1の2)といった別表が存在します。別表は全員が作成する訳ではなく、条件に当てはまった場合に作成が必要となります。
相続税申告書第11の2表は相続時精算課税に関する内容
同じく相続税申告書の第11表には「第11の2表」があり、相続時精算課税にかかる贈与によって取得した財産がある場合に作成します。
相続税申告書の第11・11の2表の付表1と第11の2表は異なる帳票であるため、書き間違いなどには注意しましょう。
相続税申告書第11・11の2表の付表1や別表1が必要な方
小規模宅地等の特例を適用する方は相続税申告書第11・11の2表の付表1の作成が必要です。
また、以下のいずれかに当てはまる場合は相続税申告書第11・11の2表の付表1(別表1)の作成が必要となります。
- 相続または遺贈により、一の住宅等を2人以上の相続人または受贈者が取得している場合
- 一の住宅等の全部または一部が、貸家建付地である場合において、貸家建付地の評価額の計算上「賃貸割合」が「1」でない場合
※一の住宅等とは、一棟の建物または構築物の敷地を言います。ただし、マンションなどの区分所有建物の場合には、区分所有された建物の部分に係る敷地をいいます。
なお、配偶者居住権に基づく敷地利用権または配偶者居住権の目的となっている建物の敷地の用の供される宅地等について、小規模宅地等の特例を適用する場合には、第11・11の2表の付表1(別表1の2)を作成する必要があります。
その他の付表は他の特例を適用する場合に作成するため、小規模宅地等の特例のみを適用する際には作成不要です。
相続税申告書第11・11の2表の付表1の書き方
まずは相続税申告書の第11・11の2表の付表1「小規模宅地等についての課税価格の計算明細書」の書き方について解説します。
1.特例の適用にあたっての同意
小規模宅地等の特例の対象となる得る宅地等を取得した全ての人の氏名を記載します。
特例を適用しない土地を取得する相続人がいたとしても、小規模宅地等の特例の対象となり得る土地であれば、氏名を記載する必要があります。
相続人全員の同意が得られる場合には、土地を相続しない相続人も含め、念のため相続人全員の氏名を記載すれば問題ありません。
2.小規模宅地等の明細
小規模宅地等の特例の対象となる得る宅地等を取得した人のうち、その特例の適用を受ける人が選択した小規模宅地等の明細等を記載し、相続税の課税価格に参入する価額を計算します。
小規模宅地等の種類
選択した小規模宅地等の種類に応じて次の番号を記入します。
- 1.特定居住用宅地等
- 2.特定事業用宅地等
- 3.特定同族会社事業用宅地等
- 4.貸付事業用宅地等
自宅の土地に小規模宅地等の特例を適用したい場合は「1」を記載します。
①特例の適用を受ける取得者の氏名〔事業内容〕
小規模宅地等の特例の適用を受ける相続人の氏名を記載します。
特定事業用宅地等、特定同族会社事業用宅地等の場合は、〔事業内容〕へ相続開始の直前にその宅地等の上で行われていた事業を記載します。
貸付事業用宅地等の場合は〔事業内容〕へ「貸家」や「貸駐車場」等と記載します。
②所在地番
登記簿謄本に記載されている土地の所在地番を記載します。
固定資産税評価明細書、もしくは納税通知書からも確認することができます。
③取得者の持分に応ずる宅地等の面積
「①特例の適用を受ける取得者の氏名」で記載した相続人が取得する土地の面積を記載します。
マンションの場合は、マンション全体の敷地面積ではなく、敷地権割合から算出した取得面積を記載します。
④取得者の持分に応ずる宅地等の価額
「①特例の適用を受ける取得者の氏名」で記載した相続人が取得する土地の評価額を記載します。
なお、ここで記載するのは小規模宅地等の特例を適用する前の評価額です。
⑤③のうち小規模宅地等の面積
「③取得者の持分に応ずる宅地等の面積」のうち、小規模宅地等の特例の適用を受ける面積を記載します。
なお、小規模宅地等の特例の適用を受ける面積には限度があるため、『「限度面積要件」の判定』で限度面積を算出し、「⑤③のうち小規模宅地等の面積」へ記載します。
⑥④のうち小規模宅地等の価額
「④取得者の持分に応ずる宅地等の価額」のうち、小規模宅地等の特例を適用できる面積分の価額を算出し記載します。
「④取得者の持分に応ずる宅地等の価額」×「⑤③のうち小規模宅地等の面積」/「③取得者の持分に応ずる宅地等の面積」で算出します。
⑦課税価格の計算に当たって減額される金額
小規模宅地等の特例を適用して減額される金額を記載します。
「⑥④のうち小規模宅地等の価額」×「⑨減額割合」で算出します。なお、「⑨減額割合」は『「限度面積要件」の判定』にあり、小規模宅地等の種類によって異なります。
⑧課税価格に算入する価額
小規模宅地等の特例を適用した後の土地の評価額を記載します。
「④取得者の持分に応ずる宅地等の価額」-「⑦課税価格の計算に当たって減額される金額」で算出します。
また⑧で算出した価額を、を相続税申告書の第11表の付表1の「財産の明細」の「価額」の欄に記載します。
「限度面積要件」の判定
小規模宅地等の特例には適用できる面積に限度があります。その限度面積を算出し、「2.小規模宅地等の明細」に利用します。
⑩⑤の小規模宅地等の面積の合計
小規模宅地等の特例を適用する土地の面積を、小規模宅地等の種類ごとに記載します。
⑪限度面積
小規模宅地等の特例を適用できる限度面積を算出します。
特定居住用宅地等の場合は1⃣の⑩の面積を記載します。特定事業用宅地等と特定同族会社事業用宅地等の場合は2⃣の⑩および3⃣の⑩の面積の合計を記載します。
貸付事業用宅地等の場合は「ロ」の該当する箇所へ面積を記載します。
相続税申告書第11・11の2表の付表1(別表1)の書き方
小規模宅地等の特例を適用する土地を2名以上で取得した場合や、貸家建付地で賃貸割合が「1」でない場合に別表1を作成します。
1.一の宅地等の所在地、面積及び評価額
ここでは宅地等の所在地や面積などを記載します。
宅地等の所在地
小規模宅地等の特例を適用する土地の所在地を記載します。
①宅地等の面積
小規模宅地等の特例を適用する土地の面積を記載します。
なお、相続した土地が元々被相続人と他者との共有地である場合には、被相続人の持分に応じた面積を記載します。
また、記載するのは1つの土地のみで、複数の土地の適用する場合は第11・11の2表の付表1(別表1)をもう一枚用意し、そこへ記載します。
面積
相続開始の直前における宅地等の利用区分に応じてA~Fまで記載欄が分かれています。適切な箇所へ土地の面積を記載します。
なお、ここに記載するのは土地の面積であるため、小規模宅地等の特例の上限を気にする必要はありません。
評価額
適切な箇所へ土地の評価額を記載します。
ここで記載するのは小規模宅地等の特例を適用する前の評価額です。
一の宅地等の取得者ごとの面積及び評価額
「1.一の宅地等の所在地、面積及び評価額」のAからFまでの宅地等の面積及び評価額を、宅地等の取得者ごとに記入します。
記入する欄は2人分しかないため、土地の取得者が3人以上の場合は第11・11の2表の付表1(別表1)をもう一枚用意し、そこへ記載します。
宅地等の取得者氏名
小規模宅地等の特例を適用する土地を取得する人の氏名を記載します。
⑭持分割合
相続する土地の持分割合を記載します。
1.持分に応じた宅地等
持分に応じた宅地の面積と評価額を記載します。
A~Fまで記載箇所が分かれており、適する箇所へ土地の面積と評価額を記載します。
2.左記の宅地等のうち選択特例対象宅地等
「1. 持分に応じた宅地等」で記載した土地のうち、小規模宅地等の特例を適用する面積と評価額を記載します。
評価額は小規模宅地等の特例を適用する前の額を記載します。
3.特例の対象とならない宅地等
小規模宅地等の特例を適用しない土地の面積と評価額を記載します。
「1. 持分に応じた宅地等」-「2.左記の宅地等のうち選択特例対象宅地等」で算出した土地の面積と評価額を記載します。
相続税申告書第11・11の2表の付表1の記載例
相続税申告書第11・11の2表の付表1の記載例を、具体的な例を用いてご紹介します
限度面積を超える特定居住用宅地を1人で相続する場合
400㎡の自用地を法定相続人1人が相続した場合の相続税申告書第11・11の2表の付表1の記載例です。
限度面積以内の特定居住用宅地を2人で相続する場合
200㎡の自用地を法定相続人2人で2分の1ずつ相続した場合の相続税申告書第11・11の2表の付表1の記載例です。
特定事業用宅地を1人で相続する場合
200㎡の特定事業用宅地を法定相続人1人で相続した場合の相続税申告書第11・11の2表の付表1の記載例です。
特定同族会社事業用宅地を1人で相続する場合
200㎡の特定事業用宅地を法定相続人1人で相続した場合の相続税申告書第11・11の2表の付表1の記載例です。
貸付事業用宅地を1人で相続する場合
200㎡の特定事業用宅地を法定相続人1人で相続した場合の相続税申告書第11・11の2表の付表1の記載例です。
複数の種類の宅地等について特例を適用する場合
365㎡のうち、165㎡が特定事業用宅地、200㎡が貸付事業用宅地について、相続人A・Bがそれぞれ相続した場合の相続税申告書第11・11の2表の付表1の記載例です。
なお、限度面積を超えているため、特定居住用宅地:165㎡を優先的に適用し、残りの限度面積の範囲内でで貸付事業用宅地のうち100㎡に小規模宅地等の特例を適用しています。
相続税申告書第11表の付表1への記載方法
⑧の数字を相続税申告書の第11表の付表1の「財産の明細」の「価額」の欄に記載します。
面積や単価は小規模宅地等の特例を適用する前の数字を記載し、価額は小規模宅地等の特例を適用後の価額を記載します。
また、取得財産の価額も小規模宅地等の特例を適用後の価額を記載します。
相続税申告書はどこからダウンロードできる?
国税庁のホームページでPDF形式の相続税申告書の様式をダウンロードすることができます。相続税申告書の第11・11の2表の付表1や別表1だけでなく、他の申告書もダウンロードできます。
また、税務署でも申告書を受け取ることができます。
令和6年以降に亡くなった場合は令和6年分の様式に記載する
相続税申告書は年度によって様式が異なることがあります。亡くなった年度ごとに適切な様式を選び、そこへ記載することになります。
令和6年度以降に亡くなった場合は、令和6年分様式の相続税申告書を作成します。様式が変わった場合は、亡くなった年度に合わせた様式で作成しましょう。
国税庁のホームページには相続税申告書作成コーナーがない
確定申告は国税庁のホームページにある「確定申告書等作成コーナー」から簡単に申告することができますが、「相続税申告書作成コーナー」はありません。
そのため、簡単に相続税申告書を作成したい場合は民間のソフトを利用することになります。
e-taxで申告書を作成することもできますが、パソコンにソフトをダウンロードし、申告書の書き方を調べた上で数字を入力する必要があります。自動計算機能はないため、手書きとの違いはパソコン入力できるかどうか程度です。
また、e-taxは共同で申告書を作成することはできず、相続人ごとに申告書を作成することになるため、相続人が多ければ多いほど手間も時間もかかります。
国税庁のホームページにはエクセル形式の相続税申告書もない
国税庁のホームページにはエクセル形式の相続税申告書もありません。PDF形式になるため、パソコンで入力したい場合はPDF編集ソフトが必要です。
エクセルで申告書を作成したい場合は有料ソフトを購入することになります。しかし、士業向けに作られたものが多く、解説もほとんどないため、申告書の書き方や財産の評価方法などを把握していなければ正しい申告書を作成できません。
相続税申告書をパソコン入力で作成するなら『better相続申告』がおすすめ
自分で簡単に相続税申告書を作成したい場合は『better相続申告』のご利用をおすすめします。
解説を見ながらフォームに情報を入力すると相続税申告書が自動で作成されます。相続税や非課税枠の計算も自動で行われるため、ミスを抑え、手間や時間を省くことができます。
何をすればいいのか調べる必要はなく、画面に表示された案内の通りに財産調査や必要書類を収集し、情報を入力すれば申告書が完成します。
財産調査も税理士が質問するような内容となっているため、税務署が気にする財産に気づき、申告漏れによる税務調査リスクを軽減できます。
また、書類のリストアップ機能もあるため、抜け漏れなく書類を収集し、税務署へ提出することもできます。
無料でお試しいただけますので、お気軽にご利用ください。