相続税申告の税理士費用は誰が払うのが良いのかについて解説
相続税申告を税理士に依頼する場合、一般的に数十万円ほどの費用がかかります。その費用を誰が払うべきなのか疑問に持たれる方が多くいらっしゃいます。
今回は相続税申告の税理士費用を誰が払うのが良いのか、高い報酬を払いたくない時の対処法について解説します。
目次
相続税申告にかかる税理士費用は誰が払うのか
相続税申告にかかる税理士費用は相続人の合意によって支払う人が決まります。そのため、相続人全員で負担する、1人の相続人がすべて負担するなどの支払い方でも問題ありません。
税理士費用は数十万円ほどかかるため、相続人間で揉めないように決めることをおすすめします。相続する財産の割合が多い相続人の負担を増やす、手続きを負担した相続人の費用割合を減らすなど、相続人全員が納得する形で負担する金額を決めます。
なお、税理士報酬を相続人の代表者へ請求する税理士事務所が多いため、誰が払うか決まらない場合は一時的に代表者が支払い、後に相続人から徴収します。
相続税申告は誰が行うのか
相続税申告は相続人全員が対象で、1つの申告書に連名で提出することが一般的となっています。
しかし、相続人の仲が悪く、連名での相続税申告が難しい場合は相続人ごとに申告書を提出することになります。その場合、相続人ごとに申告書の内容が異なると税務調査リスクが高くなるため、税理士に依頼されることをおすすめします。
各相続人が個別に申告を行う場合、税理士費用はそれぞれの相続人が負担することになります。
相続税申告にかかる税理士費用の負担例
相続税申告にかかる税理士費用はどのように負担するのが良いか、その例をご紹介します。
故人の配偶者が健在の場合
故人の配偶者が健在の場合、配偶者に税理士費用を全額負担させると、相続税上は有利になる場合があります。
一般的に配偶者であれば、配偶者控除を使うことができるため、取得する財産のうち、1億6,000万円または配偶者の法定相続分相当額のどちらか多い金額までは相続税がかかりません。そのため、税理士費用を考慮して配偶者に財産を相続させることで、相続税を抑えつつ、税理士費用を確保することができます。
また、配偶者が亡くなった時の相続に対しても有効と言えます。配偶者が税理士費用を負担することで、配偶者の財産を減らすことにつながり、結果として相続税の負担を減らすことができます。
税理士費用や以下でご紹介する行政書士等の報酬も考慮した上で財産分割を検討されるのがよいでしょう。
相続人に配偶者がいない場合、配偶者控除や二次相続を考慮する必要がないため、相続人が揉めない形で税理士費用を負担します。主に考慮する点としては、相続する財産額と手続きの負担の2点があります。
相続する財産が多い相続人が税理士費用を負担することで、金銭的な負担を公平にすることができます。特に、遺言書で財産分割が決まっている場合は相続財産額を考慮することをおすすめします。
また、相続手続きは必要書類の収集から提出まで様々なことを行う必要があります。手続きにかかった時間や手間も考慮して費用の負担を決めると揉める可能性を低くすることができます。
相続税申告以外にかかる費用を誰が負担するのか
相続税申告にかかる税理士費用の負担について解説してきました。
相続では他にも手続きがあり、その費用を誰が負担するのかについて解説します。
行政書士に依頼した時の費用
行政書士は相続関係説明図や法定相続情報一覧図の作成、戸籍等の収集、相続財産の調査、預貯金や自動車などの名義変更を行うことができます。
相続関係説明図や法定相続情報一覧図の作成、戸籍等の収集、相続財産の調査は相続人全体に影響する手続きのため、相続人が公平に費用を負担することをおすすめします。
預貯金や自動車の名義変更にかかる費用は、相続により取得した人が負担すると他の相続人と揉める可能性を低くすることができます。
司法書士に相続登記を依頼した時の費用
不動産を相続する際、相続人へ名義変更を行う必要があります。専門家へ依頼する場合は司法書士への依頼となります。
司法書士へ依頼した際の費用は、不動産を相続した相続人が負担すると良いです。複数の不動産を複数の相続人が取得する場合は、各不動産ごとに取得した持分割合に応じて費用を負担すると、相続人間で揉める可能性を低下させることができます。
弁護士に依頼した時の費用
相続人間で揉めてしまった場合、遺産分割協議の仲裁を行ってくれます。この時の費用は弁護士へ相談した方、もしくは相続人全員で負担することが一般的です。
弁護士費用の負担で揉めそうな場合、遺産分割協議の際に弁護士費用も考慮して分割方針を決めてもらうことでトラブル回避に近づきます。
遺産分割協議書作成にかかる費用
相続人が複数いて、遺言書がない場合や遺言書に記載のない財産がある場合、遺産分割協議書を作成する必要があります。遺産分割協議書は名義変更手続きなどで必要となります。
遺産分割協議書の作成のみを専門家へ依頼した場合、相続人全員に影響するため、相続人全員で費用負担されることをおすすめします。
相続税申告を税理士に依頼して遺産分割協議書の作成も行ってくれる場合は財産金額に応じて、相続登記を司法書士に依頼して遺産分割協議書の作成も行ってくれる場合は不動産の取得者が負担すると、トラブルを回避しやすくなります。
相続税申告にかかる税理士費用の相場は?
相続税申告を税理士に依頼した際の費用相場は相続財産の0.5~1%が相場とされています。相続人や土地の数、非上場株式の有無、申告期限までの日数によって費用が異なります。
仮に相続人が1人で財産総額が3,600万円を少し超える程度だった場合、税理士に依頼した費用の相場は18~36万円となります。申告が必要な財産額より少し多い場合でも数十万円の費用となることが多いです。
少なくない費用を誰が支払うのかは揉める原因となりやすいため、相続人同士でしっかりと話し合って、解決されることをおすすめします。
まだ税理士に依頼をしておらず、税理士費用で悩んでいる場合は相続税申告を自分で行い、費用を抑えてみてはいかがでしょうか。
相続税申告の税理士費用は相続財産から控除できる?
相続税申告の税理士費用は相続財産から控除することができないため、高額な税理士報酬を支払っても相続税を下げることができません。
相続人に配偶者がいない場合、二次相続を考慮する必要がないため、高額な税理士報酬を支払うメリットは多くありません。そのため、なるべく税理士報酬を抑えた方が相続する財産を減らさずに済みます。
相続税申告の税理士費用は確定申告でも経費にできない
相続税申告の税理士費用は確定申告を行っても経費にはできません。相続により取得した財産は所得ではないため、相続税申告の税理士費用は経費とみなされません。
相続税申告の税理士費用は所得税からも相続税からも控除することができないため、費用をそのまま支払うことになります。
相続税申告の税理士費用が気になる方は費用を抑えるために、自分で相続税申告を行うことをおすすめします。
相続税申告の税理士報酬が高い場合は自分で申告することをおすすめ
相続税申告を税理士に依頼しておらず、費用面でお悩みの方は自分で相続税申告を行うことをおすすめします。そうすることで税理士報酬を抑えることができ、高額な報酬で相続人が揉めることもなくなります。
非上場株式や海外資産など評価の難しい財産がなく、相続人が揉める可能性も低く、手続きを行う時間を確保することができれば、自分で相続税申告を行うことができます。
自分で相続税申告を行うと、時間や手間がかかる、税務調査リスクが高いと言われていますが、ソフトを使うことでそのリスクを軽減することができますので、まずは自分で相続税申告を行ってみてはいかがでしょうか。
自分で相続税申告を行うメリット
相続税申告を税理士に依頼せず、自分で行うメリットについて解説します。
相続税申告の税理士報酬を抑えられる
相続税申告を自分で行うことにより、税理士報酬を抑えることができます。
数十万円の報酬を抑えることができれば、税理士費用を誰が払うのかで揉める可能性を低くすることが可能です。
費用を抑えることで相続した財産を大切に使える、自分や次の世代にお金を使えるといったメリットがあります。
自分のペースで手続きを進められる
相続税申告を税理士に依頼した場合、必要書類を税理士へ渡したり、面談をしたりする必要があります。受け渡しや面談を行うには日程調整を行い、税理士事務所へ行くことになります。
自分で相続税申告を行うことで税理士との日程調整や事務所へ行く必要がなくなります。期限はあるものの、自分のペースで手続きを進めることができるため、日程調整や移動のストレスを減らすことができます。
財産を確認しながら相続税申告を進められる
過去の預金の動き等を確認しながら、財産を細かく洗い出し、申告手続きを進める必要があります。その際、どのようなことがあって財産が変化したのかを確認することができます。
財産を確認しながら手続きを進めることで、故人の人生が見え、思い出を振り返ることができた、相続と向き合うことで自分自身の気持ちの整理がついたという意見もあります。
相続税や手続きに関する知識が身につく
相続税申告を自分で行うことにより、相続税や手続きに関する知識を身につけることができます。
それにより、次の相続に向けた相続税対策を行うことができます。例えば、生命保険の非課税枠の活用や小規模宅地等の特例の要件(相続した土地の評価額を下げることができる制度)に当てはまるようにするなどがあります。
また、相続税申告を自分で行いやすくするために評価の難しい財産を現金化しておく、財産が分かりやすいようにまとめておくなどの対策も行いやすくなります。
自分で相続税申告ができるケース
自分で相続税申告ができるケースについて解説します。
条件に当てはまる方はぜひ自分で相続税申告を行ってみてください。
評価の難しい財産がない
非上場株式や海外資産など、専門家でないと評価が難しく、税務調査リスクの高い財産がなければ自分で相続税申告を行うことができます。
また、土地の評価は難しいとされていますが、減額できる可能性が低ければ、比較的簡単に土地の評価を行うことができます。反対に、土地の評価額が高く、減額できる可能性も高い場合は税理士へ依頼する費用よりも減額される相続税額の方が多くなりやすいです。
相続の状況が複雑でない
相続人同士の仲が良く、遺産分割で揉める可能性が低い場合、相続税申告を自分で行いやすいです。遺産分割協議にかかる時間を削減できる、相続税申告に必要な書類を集めやすいため、円滑に相続税申告を進めることができます。
反対に相続人の仲が悪く、遺産分割で揉める可能性が高いと手続きが進まず、申告期限を過ぎてしまう可能性があります。また、申告書を各相続人ごとに提出することになると税務調査リスクが高くなります。
相続税申告を行う時間を確保できる
相続税申告を自分で行う場合、財産の洗い出しから必要書類の収集、申告書の作成・提出まで行う必要があります。仕事終わりや休日に作業できる時間を確保することができれば、自分で相続税申告を行うことができます。
相続税申告を自分で行うためのソフトを使うことで、独学で調べ、手書きで申告書を作成するよりも大幅に時間や手間を短縮することが可能です。フルタイムで働きながら、自分で相続税申告を完了されている方も多くいらっしゃいます。
相続税申告を自分で行う際によくある質問
相続税申告を自分で行う際によく出てくる質問や疑問について解説します。
相続税申告を自分で行うと税務調査が入るのか
税務調査は、隠蔽や虚偽の申告をしている疑いがある場合に対象となります。明らかな申告漏れや不動産等の財産の評価方法、特例の適用が誤っている等の場合は税務調査の対象となるリスクが高まります。
正しい内容で相続税申告を行うことができれば、自分で申告しても税務調査のリスクを抑えることができます。
自分で相続税申告を行うと税務調査が入りやすいと言われている理由は、税理士との知識の違いにあります。相続税に関する知識がないため、申告漏れが発生したり、財産の評価方法を誤ったり、特例の適用要件の判断を誤る可能性が高く、結果的に税務調査が入りやすいとされています。
自分で相続税申告を行いたい方は『better相続申告』を使い、財産の申告漏れや誤りを防止して、税務調査のリスクを抑えることをおすすめします。
財産規模別の税務調査率
「相続税申告を税理士に頼まないと税務調査が入る。その割合は10人に1人。」という情報を目にしますが、一概には言い切れません。
なぜなら、財産総額によって税務調査の割合が異なるからです。税務調査が入る割合は、以下の通り、財産規模が大きいほど高くなる傾向にあります。
-
- 財産総額が1億円未満の方:約2%
- 財産総額が1億円~3億円未満の方:約16%
- 財産総額が3億円以上の方:約35%
(※税務研究会発行の税務通信(No.3665)のデータを集計し算出。)
また、財産規模が大きくなるほど税率も高くなるため、追徴課税が発生した場合にも影響が大きくなりやすいです。
相続税の税率は最低10%、最高55%と定められていますが、同じ100万円の財産に対して、税率が10%の場合は10万円、税率が55%の場合は55万円の税金が発生することになります。
そのため、仮に追加で申告しなければいけない金額があった場合でも、元々の財産規模が小さい方(税率が低い方)と大きい方(税率が高い方)では、影響度がかなり変わってきます。
自分で土地の評価を行うのは難しく、相続税を払いすぎる?
土地の形状や立地、貸しているかどうかによって、土地の評価を行う難易度が異なります。
例えば、きれいな整形地であれば、減額の余地が少ないことが多いため、比較的簡単に土地の評価を行うことができます。反対に、土地の形が不整形であったり、面積が広大であったり、道路に面していなかったり、がけ地になっていたりしている場合等は減額の余地があるため、評価額をできるだけ減額しようとすると評価の難易度が高くなります。
しかし、必ず減額しなければならないわけではありません。小規模宅地等の特例や配偶者控除を適用することで結果的に相続税が0円になる場合には、土地の評価額を減額する必要性は低いため、難しい評価方法の検討を省略するという選択肢もあります。
また、そもそも土地の評価額が低く、減額できる余地が少ない場合も同様に、難しい評価方法の検討を省略するという判断もあります。
土地の評価減額によって抑えられる相続税額と税理士費用を比較する
土地の評価によって抑えられる相続税額よりも税理士へ依頼した時の費用の方が高い場合は、相続税申告を自分でやるという選択肢も視野に入れることをおすすめします。
例えば、報酬50万円で税理士に依頼し、土地の評価減額ができ、本来35万円の相続税が発生するところ相続税を5万円に圧縮できたとします。この場合、税理士報酬と相続税の合計は55万円となります。
一方、土地の評価減を行わずに自分で申告した場合、相続税は35万円ですが税理士報酬は0円となるため、相続税を減額せずにそのまま支払った方が全体の費用を抑えることができます。
土地の評価額や相続税額を算出した上で、税理士の見積りを入手し、減額できる相続税額と税理士報酬を比較することをおすすめします。
相続税申告を自分で行うならbetter相続申告
相続税申告の税理士費用が高く、誰が払うのかでお悩みの場合は自分で相続税申告を行い、費用を抑えると良いです。自分で相続税申告を行う場合は『better相続申告』のご利用をおすすめします。
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