遺産分割協議書とは何か、自分で作成する方法や書き方を解説
相続の手続きについて調べていると、『遺産分割協議書』という言葉を目にされると思います。
この遺産分割協議書とは何か、自分で作成する方法、記載方法などについて専門的な立場や経験から解説します。
遺産分割協議書について調べられている方や、これから作成される方の参考になれば幸いです。
目次
遺産分割協議書とは
遺産分割協議書とは、遺産分割協議で合意した内容を記した書類です。誰が、どの財産をいくら相続するのかを記載して、相続人全員の署名捺印します。
遺産分割協議書は、法律上、必ず作成しなければいけない書類ではありません。しかし、遺産分割に合意したことの証明になる、手続きを行う上で遺産分割協議書の提出が必要になるという利点があり、後々のトラブルを避けるためにも、作成することをおすすめします。
ただし、遺産分割協議書を作成せずとも、相続手続きを進められる場合があります。遺産分割協議書が不要となるケースについて、この後解説します。
遺産分割協議書が不要になる場合
基本的に必要となる遺産分割協議書ですが、不要となるケースは以下の3点です。
・相続人が一人だけの場合
・遺言書の内容に沿って遺産分割を行う場合
それぞれ解説していきます。
相続する財産がない場合
相続する財産がない場合、遺産を分割することがないため、遺産分割協議書の作成は不要です。
また、借金が多い場合や不動産などを相続しない場合などにより、相続人全員が相続放棄することがあります。相続人全員が相続放棄を行うと、遺産分割の必要がなくなるため、遺産分割協議書を作成する必要はありません。
相続人が1人だけ
相続する人が1人だけの場合、遺産を分割をする必要はないため、遺産分割協議書の作成は不要です。
遺言書の内容に沿って遺産分割を行う場合
遺言書の内容で遺産を分割する場合、遺産分割協議書を作成する必要はありません。
ただし、遺言書の内容を相続人全員が拒否した場合や、遺言書に一部の財産しか記載されていない場合には、遺産分割協議書の作成が必要です。
遺産分割協議書を念のため作成しておいた方が良い場合
遺産分割協議書を作成せずとも相続手続きを進められますが、後にトラブルが発生しないためにも遺産分割協議書を作成した方が良い場合があります。
- 法定相続分の割合で遺産を相続する場合
- 相続する財産が現金や預金のみで、かつ、相続税申告の義務が無い場合
法定相続分の割合で遺産を相続する場合
遺産を法定相続分通りに分割する場合、遺産分割協議書を作成しなくても問題ありません。
ただし、不動産が共有持分になるため、売却する際に全員の同意が必要となり煩雑です。また、その後の相続でねずみ算式に関係者が増えていくため、後々トラブルになる可能性があります。
法定相続分の割合で分割する場合でも、可能であれば不動産は誰か一人が相続し、他の財産で法定相続分の割合になるように金額調整を行い、遺産分割協議書を作成することをおすすめします。
相続する財産が現金や預金のみで、かつ、相続税申告の義務が無い
相続する財産が現金や預金のみで、かつ、相続税申告の義務が無い場合には、相続登記や相続税申告で遺産分割協議書が必要になることがありません。
金融機関の手続きだけであれば、基本的には遺産分割協議書が無くても手続きを進めることは可能です。ただし、後々のトラブルを避けるためにも遺産分割協議書を作成しておくことをおすすめします。
また、被相続人が数多くの銀行口座を所有していた場合、手続きのたびに相続人全員の署名と捺印が必要です。遺産分割協議書を作成しておくことにより、代表相続人の署名と捺印のみで手続が完了できる場合が多く、手続が円滑になります。
遺産分割協議書を使用する場面
遺産分割協議書はどのような場面で使用するのか解説します。
相続登記を行う際に遺産分割協議書を提出する
故人から相続した不動産を相続人の名義に変更する手続きを相続登記といい、法務局へ登記申請書と必要書類を提出します。
遺産分割協議書は、相続内容と登記内容に齟齬がないことを証明するために、相続登記の必要書類として法務局へ提出します。
銀行や証券に関する手続きで提出する
銀行口座の名義変更、解約を行う場合や、株式の名義変更を行う場合に各金融機関へ遺産分割協議書を提出します。
遺産分割協議書があると、本来金融機関ごとに相続人全員の署名と実印捺印を要求されるところ、代表相続人の署名と捺印のみで手続が完了できる場合が多く、手続きを円滑に進めることができます。
自動車を相続して名義変更を行う時
自動車を相続する場合、名義変更を行う必要があります。その際、遺産分割協議書を運輸支局へ提出します。
遺産分割協議書が必要になるのは査定額が100万円を超える場合で、査定額が100万円以下の場合は『遺産分割協議成立申立書』という書類を遺産分割協議書の代わりに使用できます。
なお、軽自動車を相続する場合、遺産分割協議書の提出は不要です。
遺産分割協議書を作成する方法
遺産分割協議書は自分で作成する、専門家に依頼するのいずれかとなります。
どちらに、どのようなメリットがあるのか解説します。
自分で遺産分割協議書を作成するメリット
自分で遺産分割協議書を作成するメリットは専門家に依頼する費用を抑えられることです。遺産分割協議書をコピーするためのインク代や紙代、製本テープ代が発生しますが、1,000~2,000円程度の費用で作成することができます。
また、専門家に依頼する場合でも話し合いは相続人同士が行うため、遺産分割協議書を作成する以外の手間はほぼ変わりません。専門家と話す、事務所へ出向くなどが面倒な方は自分で遺産分割協議書を作成することをおすすめします。
遺産分割協議書の作成を専門家へ依頼するメリット
遺産分割協議書の作成を専門家へ依頼するメリットは、確実な遺産分割協議書を手に入れることできる点です。誤字脱字などがなく、必要な情報が適切に記載されているため、使用できない書類として返却などをされることはほぼありません。
また、遺産分割協議書の書き方などを調べる必要もなく、作成も代行してくれるため、手間や時間を省くこともできます。
遺産分割協議書を作成できる専門家は、弁護士・税理士・司法書士・行政書士です。相続人の代理交渉などを取りまとめた遺産分割協議書を作成できるのは弁護士のみで、トラブルがない場合なら、どの専門家でも作成可能です。
相続税申告を依頼したいなら税理士、相続登記を依頼したいなら司法書士、書類作成のみを依頼したい場合は行政書士に依頼することが一般的です。
遺産分割協議書を自分で作成する方法と流れ
専門家に依頼するのではなく、自分で遺産分割協議書を作成されたい方へ、自分で遺産分割協議書を作成する方法と流れについて解説します。
遺産分割協議書を自分で作成する流れとしては以下の通りです。
②故人の財産と債務を調査する
③家庭裁判所へ相続放棄の手続きを行った方を除いた相続人全員で、遺産をどのように分割するか話し合う(遺産分割協議)
④遺産分割協議で決まった内容をもとに、遺産分割協議書を作成する
故人の出生から死亡までの戸籍謄本を確認し、相続人を調査する
故人に隠し子がいるなど、知らない相続人が出てくる可能性があるため、故人の出生から死亡までの戸籍謄本を確認し、相続人を調査します。
遺産分割協議は相続人全員で行わなければ無効となるため、相続人の調査と連絡は必ず行いましょう。
故人の財産と債務を調査する
遺産を分割するには、財産と債務がどの程度あるのか把握する必要があります。故人の住居などから財産や債務がどれくらいあるのか調査します。
預金通帳や郵便物から調査し、各事業者に問い合わせすることで、相続財産のほとんどを知ることができます。また、自宅以外の不動産を所有している場合は、役所で「名寄帳」を取得することで、課税対象の不動産の全てを知ることができます。
また、故人が管理していた別名義の口座や保険、相続人に対する贈与なども確認する必要があるため、相続人全員に故人からもらった財産がないかも確認します。
遺産分割協議を行う
相続放棄された方を除いた相続人全員で遺産分割協議を行います。
後日遺産分割協議書を作成する際に認識の齟齬や、言った・言わないのトラブルを避けるため、可能であれば録音した状態で遺産分割協議を行うことをおすすめします。
相続人に行方不明者がいる場合の遺産分割協議
相続人の中に行方不明者がいる場合には、遺産分割協議を行うことができません。この場合、まずは行方不明者の住所を特定しましょう。相続のために必要な戸籍謄本は取得可能ですので、戸籍の附票を取得すると、行方不明者の最後の住所を確認することができます。
住所を特定してもそこに住んでいなかった場合や、そもそも住所の特定ができなかった場合には、不在者財産管理人の選任を行わなければなりません。
不在者財産管理人は、行方不明者の代理人となる人のことで、家庭裁判所に申し立てることで選任できます。不在者財産管理人が選任されて家庭裁判所からも許可を受けることができたら、不在者財産管理人が遺産分割協議に参加してもらいます。
相続人に未成年者がいる場合の遺産分割協議
相続人に未成年者がいる場合は、特別代理人の選任を家庭裁判所へ申し立てます。認知症などにより判断能力が不十分な相続人がいる場合、成年後見人の選任を家庭裁判所へ申し立てます。
もし、遺産分割協議で全員の同意が得られない場合、家庭裁判所へ調停や審判の申立てを行い、代わりに分割してもらいます。
遺産分割協議書を作成する
遺産分割協議で決まった内容を遺産分割協議書へ記載します。遺産分割協議書は相続人全員の署名と捺印が必要になるため、なるべく対面で行うことをおすすめします。
どうしても集まることが難しい場合、オンラインで遺産分割協議を行い、署名と捺印は郵送で行うという方法もあります。
なお、家庭裁判所で審判をしてもらった場合、家庭裁判所が審判書を作成してくれるため、そちらを使用します。
なお、遺産分割協議書のテンプレートをこちらから無料でダウンロードしていただけます。一般的な記載例も掲載されておりますので、ぜひご参考ください。
自分で遺産分割協議書を作成するときの注意点
自分で遺産分割協議書を作成する際の注意点があります。
注意点を把握していない場合、遺産分割協議書の作成が困難になる可能性があるため、ぜひご確認ください。
遺産分割協議書の作成方法によっては無効になる
正しい方法で遺産分割協議書を作成しない場合、協議書に記載されている内容が無効になる可能性があります。無効になりやすいケースは以下の通りです。
・判断能力の不十分な相続人が遺産分割協議を行った
・遺産分割の意思表示に錯誤があった
相続放棄をした方以外の相続人全員で遺産分割協議を行わなければ無効となるため、相続人の調査と相続人全員での話し合いを必ず行います。
相続人に認知症の方や未成年の方がいる場合、成年後見人や特別代理人を代わりに遺産分割協議へ参加させる必要があります。
遺産分割協議書の内容が、協議した内容と異なっており、それに気づかず署名してしまった場合など、遺産分割の意思表示に錯誤があると遺産分割協議書が無効となります。
訂正箇所を修正するは大変
遺産分割協議書を誤った形で作成した場合や内容を間違えた場合、該当箇所を二重線で消し、相続人の訂正印を押す必要があります。
修正の都度、訂正印を押すのは大変なため、パソコンで作成し、間違いがないことを確認してから印刷と署名、捺印を行うことをおすすめします。
遺産分割協議書作成後に遺産が見つかった場合、再度作成する
遺産分割協議書作成後に新たな遺産が見つかった場合、その遺産に対して遺産分割協議書を作成します。
ただし、最初の遺産分割協議書に、後に遺産が見つかった場合の対応について記載しておくことにより、新たな財産に対する遺産分割協議を作成する必要はありません。
また、「遺産の内容によっては相続をしなかった」という相続人がいた場合、すでに作成した遺産分割協議を作り直す主張を行うことができます。
再度集まって話し合い、遺産分割協議を作成するのは大変なため、遺産分割協議前に遺産すべてを把握できるよう、しっかりと調査しておくことをおすすめします。
遺産分割のやり直しは二重課税になる
初めの遺産分割協議で決定した内容を変更し、遺産を別の相続人へ移した場合、税法上は贈与となるため、贈与税の対象になります。また、対価の支払いがあれば譲渡となり、所得税の対象になります。
不動産を別の相続人へ移した場合、相続登記をやり直す必要があり、登録免許税が発生するだけでなく、「贈与」や「売買」の対象になると、不動産取得税も発生します。
遺産分割のやり直しは相続税以外の税金も支払う必要があるため、おすすめできません。全員が納得できる分割方法や相続税が少なくなる分割方法などを検討した上で遺産分割協議を行い、遺産分割協議書を作成することをおすすめします。
遺産分割協議書の書き方
遺産分割協議書の記載の流れは、以下の8項目となります。
②被相続人(亡くなった方)の情報を記入する
③相続人全員の名前と合意した旨の記載
④相続する遺産を誰がどれくらい受け取るのか
⑤後日、遺産が見つかった際の記載
⑥遺産分割協議書の作成枚数と各自1通保管していることを記載
⑦遺産分割協議書の作成の日付
⑧相続人全員の署名と実印の押印
④は相続する財産によって書き方が異なりますが、それ以外の項目は共通となっています。
①表題に「遺産分割協議書」と記載
中央寄せで「遺産分割協議書」という表題を記入します。
2-1.被相続人(故人)の情報を記入する
次に被相続人(故人)の情報を記入します。記入する内容は以下の項目です。
・生年月日
・本籍
・最後の住所地
・死亡年月日
2-2.相次いで両親が亡くなった場合
遺産分割協議を行う前に相続人が亡くなった場合、遺産分割協議書を1枚にまとめることができます。先に亡くなった方を第一次相続、次に亡くなった方を第二次相続とし、被相続人の情報を記載します。
一次相続の被相続人の情報に加えて、二次相続の被相続人を「相続人兼被相続人」とし、氏名、生年月日、本籍、最後の所在地、死亡年月日を記載します。
また、最後の相続人署名欄には、「相続人兼〇〇(二次相続の被相続人の氏名)の相続人」と記載し、現存する相続人の署名と押印を行います。
③相続人全員の名前と合意した旨の記載
被相続人の情報の次に、相続人全員の名前と遺産分割協議書の内容に合意した旨の文章を記載します。
例としては以下のように記載します。
『上記被相続人の相続につき、相続人である被相続人の長男〇〇〇〇及び二男〇〇〇〇は、協議の上以下のとおり遺産を分割し相続することを合意した。』
④相続する遺産を誰がどれくらい受け取るのか
相続人全員の名前と合意した旨を記載した後、相続する遺産を誰がどれくらい受け取るのかを記載します。
相続人ごとに「第〇条」と「相続人〇〇〇〇は、次の財産を取得する。」を記載し、その下に相続する財産の種類ごとに「(1)」「(2)」と番号を振り、その詳細を記載します。
財産によって記載方法が異なるため、それぞれ解説します。
4-1.現預金
現金は「現金〇万円」のように相続する金額を記載します。銀行口座は、銀行名・支店名・口座の種類・口座番号まで記載します。
具体的な金額は記載せず、割合で指定することが一般的です。
1つの口座の預貯金を複数人で相続する場合、分割する割合と、振り込み手数料の負担方法を記載します。故人の口座から分配する、1人の相続人が一旦相続し他の相続人へ分配する方法があるため、どちらの方法で分配するのか、その際の手数料を誰が負担するのかまで記載します。
金額を記載しても間違いではありませんが、口座内のお金は相続発生時点から変動することがあります。相続発生時以降の入出金は精算できますが、煩雑さを回避するため割合で指定するのが一般的です。
4-2-1.不動産(一軒家)
一軒家を相続する場合、登記事項証明書に記載されている内容の通りに、遺産分割協議書へ記載します。
土地の場合は、『所在』『地番』『地目』『地積』の4つを記載します。建物は、『所在』『家屋番号』『種類』『構造』『床面積』を記載します。
所在や地番は省略せず、登記事項証明書に記載されている通りに記載します。
4-2-2.不動産(マンション)
マンションの場合、『一棟の建物の表示』『専有部分の建物の表示』『敷地権の表示』の3つの項目に分けて、登記事項証明書の通りに記載します。
一棟の建物の表示は『所在』『建物の名称』、専有部分の建物の表示は『家屋番号』『建物の名称』『種類』『構造』『床面積』、敷地権の表示は『符号』『所在及び地番』『地目』『宅地』『地積』『敷地権の種類』『敷地権の割合』を記載します。
4-2-3.不動産(共有持分の場合)
複数の人が所有している不動産を相続する場合、故人が所有していた持分割合を「持分 〇分の〇」のように記載します。
4-2-4.配偶者居住権
故人が住んでいた家に、配偶者が一定期間、もしくは亡くなるまで無償で使用できる権利を配偶者居住権といいます。
配偶者居住権を設定する場合、「相続人○○○は相続人○○○の死亡時まで、次の不動産に関する配偶者居住権を取得し、相続人●●●は所有権を取得する。」と記載し、その下に不動産の情報を記載します。
4-3-1.有価証券など
上場株式や投資信託などの有価証券を相続する場合、『証券会社名』『支店名』『口座番号』『銘柄名』『銘柄コード』『数量』を記載します。
具体的な保有数や銘柄は証券会社から、お亡くなりになった日時点の残高証明書を取得すると一覧で確認することができます。
4-3-2.出資金
協同組合や信用金庫などへの出資金を相続する場合、協同組合は『名称』『組合員コード』『口数』を、信用金庫の場合は『名称』『支店名』『口数』を記載します。
4-4.ゴルフ会員権
相続の対象となるゴルフ会員権がある場合、ゴルフ会員権発行の会社名・会員番号を記載します。預り金や出資金がある場合、その内容も記載します。
4-5.自動車
自動車を相続する場合、登録者番号(ナンバー)と車体番号を記載します。車体番号は車検証から確認できます。
4-6.名義財産
名義財産とは、実際の所有者と名義が異なる財産のことをいいます。例えば、専業主婦(夫)が配偶者の収入を自身の名義の銀行口座で預金していた場合や、銀行口座の名義が息子で、入出金などの管理を父が行っていた場合は、財産の所有者は父となります。名義財産も相続の対象となるため、遺産分割協議書へ記載します。
まず、「相続人○○○及び相続人○○○は、名義人の異なる次の遺産が被相続人の遺産であることを確認する。」を記載し、その下に名義財産にあたる財産を記載します。この時、名義人の名前も記載します。
名義財産の記載が完了した後、誰がどのように名義を相続するのか記載します。その際も名義人の名前を記載します。
4-7.葬式費用と債務について
故人に借金があった場合や葬式費用が発生している場合、債務と葬式費用を誰がどのくらい負担するのかを記載します。
借金の場合は「相続人〇〇〇〇は●●銀行の借入金△△円を負担する。」、葬式費用の場合は「相続人〇〇〇〇は葬祭費用の△△円を負担する」と記載します。
⑤遺産が見つかった時の事項
遺産分割協議書を作成した後に遺産が出てきた場合にどうするかを記載しておきます。
再度協議を行うのか、法定相続分で分割するのか、誰かがすべて相続するのかなどを記載しておくことで、トラブルを避けることができます。
例えば、「本協議書に記載なき遺産及び後日判明した遺産については、相続人○○○が取得する。」のように記載しておくことが一般的です。
⑥遺産分割協議書の作成枚数と各自1通保管していることを記載
財産と債務の記載が完了した後、「以上のとおり、相続人全員による遺産分割協議が成立したので、これを証するため本書を〇通作成し、各自1通の保管とする。」という記載をします。
相続人が各自1通ずつ遺産分割協議書を保管するため、作成枚数には相続人の数と同じ数字を入れます。
⑦遺産分割協議書の作成の日付
作成通数と保管している旨の記載が完了した後、遺産分割協議書を作成した日付を記載します。
8-1.相続人全員の署名と実印の押印
遺産分割協議書を作成した日付の下に相続人ごとに『住所』『署名(直筆)』『実印による押印』を行い、遺産分割協議書への記載は完了です。
8-2.相続人に代理人がいる場合
相続人に未成年者や判断能力に欠ける方がいる場合、その方の住所、氏名の後に、その方の代理人の住所、肩書、氏名(例えば、「〇〇(相続人の氏名)特別代理人〇〇(特別代理人の氏名)を記載し、実印を押印します。
代償分割や換価分割を遺産分割協議書に記載する方法
不動産など実勢価格が大きく、分割も難しい財産の場合、代わりに現金を渡す、売却費用を分け合うなどの分割方法があります。
その場合、どのように遺産分割協議書へ記載すればよいのか解説します。
4-7.代償分割を行う場合
代償分割は、1人の相続人が財産を相続し、他の相続人へ代償金を支払うという分割方法です。遺産分割協議書に代償分割であることを記載せずにお金を渡してしまうと、贈与税が発生する可能性があります。
「相続人○○○は、相続人●●●に対して、第〇条の遺産取得の代償として、金〇〇円を、令和○年○月○日に限り、相続人●●●が指定する口座に振り込む方法により支払う。」などのように記載をします。
8-3.換価分割を行う場合
換価分割は、遺産を売却して現金を分け合う分割方法です。相続した家や土地を売却したい場合に有効です。
「相続人〇〇〇〇は、換価分割のために下記記載の不動産を便宜的に取得する。」と記載し、その下に売却予定の財産情報を記載します。
売却予定の財産情報の下に「前条で取得した不動産を売却によって換価し、その金額より不動産売却手数料、契約書作成費用、登記手続費用、譲渡所得税費用等売却に伴う一切の費用を控除した残金を相続人○○○及び相続人●●●が各2分の1ずつの割合により取得する。」のような記載を行います。
遺産分割協議書の綴じ方
遺産分割協議書が複数枚になった場合のまとめ方をご紹介します。改ざん防止や書類の信頼向上につながりますので、この方法で綴じることをおすすめします。
遺産分割協議書が薄ければホチキス止め
遺産分割協議書が数枚の場合はホチキスで綴じます。縦書きの場合は右側、横書きの場合は左側にホチキス止めをします。
ホチキスで止めたら、遺産分割協議書を開け、書類のつなぎ目すべてに相続人全員の押印を行います。
遺産分割協議書が厚い場合は製本テープを使う
遺産分割協議書の枚数が多く、押印が面倒な場合やホチキスだけではまとめられない場合は製本テープを使用します。
縦書きの場合は右側、横書きの場合は左側にホチキス止めをし、その上から製本テープを貼って製本します。表紙と裏表紙の製本テープと紙をまたぐように相続人全員の押印をして完成です。
遺産分割協議書を作成する際は印鑑証明書も収集しておくと良い
遺産分割協議書を作成する際、相続人全員の印鑑証明書を集めておくことをおすすめします。
例えば、金融機関の手続き、相続税申告、相続登記の手続きで印鑑証明書の提出を求められることがあるため、遺産分割協議書を作成する際に集めておくと効率的です。印鑑証明書は、遺産分割協議書に押印する印鑑と同じでなければいけないため、その点も注意が必要です。
相続人が遠方におり集まるのが難しい場合の遺産分割協議書の作成方法
相続人が遠方におり、集まるのが難しい場合は、オンラインで遺産分割協議を行い、郵送で遺産分割協議書を作成する方法があります。
協議した内容をもとに、署名と押印以外の項目まで記載し、遺産分割協議書を途中まで完成させます。その後、郵送で各相続人に遺産分割協議書を渡し、署名と押印を行ってもらいます。
全員の署名と押印が完了した後、各自1部ずつ保管できるように郵送します。
相続人が海外にいる場合の遺産分割協議書作成方法
相続人が海外にいて、住所は日本にある場合、遺産分割協議書を海外へ郵送すれることにより、署名や押印を行うことができます。また、印鑑証明書が必要な手続きがある場合、各国にある日本大使館や領事館で印鑑証明書を発行することができます。
日本に住所がない場合、日本大使館などに遺産分割協議書を持って行き、サイン証明をもらうことで署名したことになります。
相続登記などで住民票が必要な場合は『在留証明書』、帰化している場合は『相続証明書』をもらうことをおすすめします。
財産ごとに遺産分割協議書を作成できる
遺産分割協議書は、不動産のみ、現預金のみなど財産ごとに作成することができます。
遺産分割協議で不動産だけ分割が進まない場合や、不動産の売却を早めに行いたい場合などの際に有効です。財産ごとに作成する場合でも遺産分割協議書の作成方法は同じです。
また、複数作成する場合でも、相続人全員の署名と押印は省略できません。
遺産分割協議書の作成もその他の相続手続きも自分で行えます
遺産分割協議書を自分で作成されたい方は、テンプレートをご用意しております。一般的な記載例等も記載されていますので、ぜひダウンロードしてお使いいただけますと幸いです。
遺産分割協議書の作成後、銀行口座の解約や名義変更、相続登記、相続税申告などの手続きを行います。相続登記や相続税申告をできるだけ費用を抑えて自分で行いたい方は、ぜひ『better相続登記』や『better相続申告』のご利用の検討をお願いいたします。誰でも簡単に相続登記や相続税申告が行えるシステムとなっております。
また、遺産分割協議書作成のサポートやその他相続手続きを専門家にご依頼いただくこともできますので、まずはメール(souzoku-info@jp-better.com)やお電話(03-4405-2402)にてお気軽にお問い合わせください。
監修者情報
徳永 和喜(公認会計士)
高校卒業して就職後、一念発起して公認会計士試験合格。
2018年から株式会社better創業メンバー取締役としてbetter相続Webアプリケーション開発に従事。公認会計士/税理士とエンジニアを兼務しながら、相続税申告の案件にも携わる。
2022年10月、経営統合により辻・本郷ITコンサルティング株式会社の執行役員就任。better相続事業部長として、自分で相続税申告や相続登記を行う方へより良いサービスの提供を目指している。