土地を相続した時の手続きや費用、売却などについて解説
土地を相続する際、期限までに様々な手続きを完了させる必要があります。
今回は土地を相続した際、どのような手続きをいつまでに行うのかについて解説します。
また、費用や税金、土地を売却する際の手続きなどについても解説しますので、土地の相続の参考にしていただければ幸いです。
目次
土地を相続する際の手続きの流れ
土地を相続する際、どのような手続きが必要になるのか解説します。
遺言書の有無を確認する
まずは遺言書の有無を確認します。法務局へ遺言を保管していた場合、法務局が死亡を確認次第、相続人へ通知が来ます。保管していない場合は故人の自宅などを探し、遺言書の有無を確認します。
自筆証書遺言が法務局以外にあった場合、家庭裁判所での検認を受けた後、開封して内容を確認します。検認をせずに遺言書を開けた場合、過料が科される可能性があります。
公正証書遺言の場合、検認が不要なため、見つけ次第すぐに開封して、遺産をどのように分割するのか確認します。
誰が相続人になるのか調査を行う
相続が発生した際、故人の出生してから死亡するまでの連続した戸籍謄本を取得し、相続人が誰になるのかを調査する必要があります。
相続人を調査せずに手続きを進めてしまうと、遺産分割のやり直しや手続きを進めることができないなどのトラブルが発生します。なお、公正証書遺言があり、特定受遺者へ相続又は遺贈させる記載があれば、相続人調査は不要となります。
転籍や婚姻などをしている場合、転籍・婚姻前の本籍地所在地の市区町村で、除籍謄本や改製原戸籍謄本を取得する必要があります。出生から死亡まで同じ市区町村に本籍地があればすべて取得できますが、他の市区町村から転籍した場合などは、転籍後の戸籍しか取得できませんので、それ以前のものは転籍元の役所に請求する必要があります。
なお、令和6年3月1日より戸籍法の一部が改正/施行され、本籍地以外の市区町村の窓口でも、戸籍謄本・除籍謄本を請求できるようになりました。これによって、本籍地が遠くにある方でも、お住まいや勤務先の最寄りの市区町村の窓口で請求できるようになりました。詳細は、以下の法務省のホームページをご参照下さい。
戸籍法の一部を改正する法律について(令和6年3月1日施行)
土地を含めた財産を調査する
遺産の分割や今後の手続きを進めるために土地を含めた財産の調査を行います。調査する財産の項目は以下になります。
預金 | 名義預金 | 株式など | 保険 |
現金 | 不動産 | 貸付金 | 死亡退職金 |
年金 | 未収金 | 家財 | 葬式費用 |
借入金 | 未払金 | 生前贈与 | その他 |
土地の場合、不動産の権利証や固定資産評価証明書、名寄帳などからどこにどのような土地があるのかを把握することができます。
なお、固定資産評価証明書は課税対象の土地を記載、名寄帳は管轄の市区町村ごとの情報を記載しているため、双方の特徴を生かして取得されることをおすすめします。
必要であれば遺産分割協議を行い、遺産分割協議書を作成する
遺言書がない場合や遺言書に記載のない遺産があった場合、相続放棄した相続人を除く全員で遺産分割協議を行い、誰がどの財産を相続するのかを決定します。
土地など相続人間で分けることが難しい財産がある場合、誰が相続するのかで揉めてしまうケースが多々あります。トラブルを避けるためにも様々な分割方法を活用することをおすすめします。
遺産分割協議の内容を遺産分割協議書へ記載して分割は完了です。遺産分割協議書は土地の名義変更などで利用するため、必要であれば作成することをおすすめします。
遺産総額が基礎控除額を超えた場合、相続税申告を行う
相続税の基礎控除は【3,000万円+600万円×相続人の数】で算出され、遺産総額が基礎控除額を上回った場合、相続税申告を行わなければいけません。相続税申告は相続が発生してから10か月以内に行う必要があり、期限を過ぎると延滞税などのペナルティが科されます。
土地が財産に含まれる場合、計算方法によって遺産総額が基礎控除額を超えない場合があります。計算が難しい場合は税務署へ相談することをおすすめします。
非上場株式など評価の難しい財産がない場合、相続税申告は自分で行うことができます。『better相続申告』を使うことで初めての方でも自分で簡単に相続税申告を行うことができます。評価の難しい財産がある場合は税理士へ依頼することをおすすめします。
相続した土地の名義変更を行う
相続した土地は故人の名義から相続人の名義に変更します。この手続きを相続登記といい、2024年4月から義務化され、相続の開始及び相続により不動産の所有権を取得したことを知った日から3年以内に手続きを行わなければいけません。正当な理由なく相続登記の申請を3年以内に行わなかった場合、10万円以下の過料が科されます。施行日以前に相続した不動産も過料の対象です。
相続登記をしないでいると、相続登記義務化に違反するだけでなく、その後の手続きが複雑になる可能性があります。例えば、相続登記を放置したままで、相続人の子のうちの誰か又は全員が亡くなるとします。そうすると、子の配偶者や子の子らが相続人として関与することになります。このように、相続が発生した当時に相続登記を行わないと、相続関係者が増えていき、手続きが難航する可能性があります。
登記申請書など必要書類を用意し、法務局へ提出することで手続きが完了します。相続の内容が複雑でなければ相続登記も自分で行うことができます。
『better相続登記』は専門家のノウハウをシステムに落とし込んでいるため、初めての方でも簡単に自分で相続登記を行うことができます。相続の内容が複雑な場合は司法書士へ依頼することをおすすめします。
土地を活用する・売却する
相続登記まで手続きが完了した後、土地の活用や売却を行います。
固定資産税や維持費がかかる場合は、借地などにして収入を得る、売却して固定資産税などを無くすなども検討されることをおすすめします。
不動産の活用や売却については専門家へ相談し、シミュレーションや売却額について把握されてから検討すると良いです。
相続した土地が農地や山林だった場合の手続き
相続した土地が農地や山林だった場合、手続きの流れが少し異なります。
どのような手続きが必要になるのか解説します。
相続した土地が農地だった場合の手続き
相続した土地が農地だった場合、市町村の農業委員会への届け出が必要となります。届出書と登記事項証明書を管轄の農業委員会へ提出します。
登記事項証明書が必要となるため、先に相続登記を完了させる必要があります。また、農業委員会への届け出は相続開始を知ってから10か月以内に行わなければいけません。
農地がある場合は早めに相続登記を完了させ、農業委員会への届け出を10か月以内に行うようなスケジュールで手続きを進めることをおすすめします。
相続した土地が山林だった場合の手続き
山林を相続した場合、90日以内に市町村長へ届け出を行う必要があります。山林の所有者となった日から90日以内に、取得した土地のある市町村へ届け出を行います。
ただし、届け出が必要なるのは都道府県が策定する地域森林計画の対象となっている森林であるため、届け出が必要かどうか担当部局へ確認されることをおすすめします。
先に市町村長への届け出を提出し、その他の手続きが落ち着き次第、相続登記を完了させることをおすすめします。
土地を相続する際に発生する税金
土地を相続する際に税金が課される可能性があります。
どのタイミングでどのような税金が課されるのか解説しますので、納税準備などに備えてください。
土地の相続登記を行う際に登録免許税が課される
相続や贈与、売買によって不動産の名義変更を行う場合、登録免許税が課されます。相続の場合は固定資産税評価額の0.4%が登録免許税の税率となります。贈与や売買、相続人以外が取得した場合は2%の税率が適用されます。計算が若干複雑なため、計算ツールなどを利用することをおすすめします。
登録免許税は登記申請書などを法務局へ提出する際に、収入印紙を貼ることで納めることができます。直接法務局へ提出する場合、提出直前に収入印紙の購入・貼り付けを行う形で問題ありません。
なお、相続登記を行う前に相続人が亡くなってしまった場合や、相続する土地の価額が100万円以下の場合は登録免許税が免税となる可能性があります。令和7年3月31日までが免税の期間となっています。
遺産総額によって相続税が課される
遺産総額が相続税の基礎控除額を超える場合、相続税が課される可能性があります。相続税には様々な控除があるため、適用することによって遺産総額が基礎控除額を超えている場合でも相続税が0円になる場合もあります。
相続税を納めるタイミングは、申告期限内であればいつでも問題ありません。しかし、申告期限を過ぎてしまうと延滞税が加算されるため、注意が必要です。
相続税申告によって算出された金額を納付書へ記載し、金融機関や税務署で相続税を納めます。金銭一括納付が原則となっているため、相続税がいくらになるのかシミュレーションを行い、相続税を納めるための資金を用意しておくことをおすすめします。
土地を相続する際に発生する費用
土地を相続する場合、税金以外にも費用が発生します。どのような費用がどれくらい発生するのか解説します。
書類の取得や作成にかかる費用
相続人や土地を把握する場合や、相続登記の添付書類として様々な書類を取得する必要があります。書類の枚数や種類、取得方法によって費用が異なりますが、一般的に数千~数万円ほどの費用となっています。
金融機関での手続きや相続登記手続きで使用した書類は、提出先に原本還付をすることで、他の相続手続きにも使用することができます。複数の提出先での手続きが必要な場合は、原本還付をすることで書類の取得や作成にかかる費用を抑えることができます。
相続登記を司法書士に依頼する費用
司法書士に相続登記を依頼すると、手続きを代行してくれるため、手間を省くことができます。また、相続関係などが複雑な場合でも確実に相続登記を行ってくれます。
その分、司法書士に依頼すると7~15万円ほどの費用が発生します。相続の内容や土地の数などによって費用が変動し、相場よりも高い報酬になる可能性もあります。
相続関係などが複雑で自分で相続登記を行うことができない場合は司法書士への依頼をおすすめします。手続きが複雑になる場合とは、例えば、被相続人が死亡してから年月が経っており相続登記に必要な住民票の除票等の書類が発行できない、相続人が多くて集める戸籍等が膨大となり自分で書類が収集できない、数次相続・代襲相続といった2次相続・3次相続が発生している等があげられます。
自分で手続きを行う場合は『better相続登記』、相続登記手続きの全てをお任せしたい又は手続きが複雑になる場合は司法書士に依頼すると良いでしょう。
相続税申告を税理士に依頼する費用
相続税申告を税理士へ依頼した場合、相続税の計算や相続税申告書の作成などを代行してくれるため、相続税申告書の作成などの手間を省くことができます。
その際に発生する報酬は遺産総額の0.5~1%となっています。仮に遺産総額が1億円だった場合、50万円~100万円の費用が発生します。相続関係や申告期限までの期間、土地の数などによって費用が変化します。
税理士に相続税申告を依頼する費用を抑えたい方は『better相続申告』のご利用をおすすめします。初めての方でも簡単に自分で相続税申告ができるシステムとなっており、ガイドに沿って情報を入力すると相続税申告が作成できます。
評価の難しい財産がなく、相続関係も複雑でない場合は自分で相続税申告を行い、非上場株式など評価の難しい財産がある場合は税理士に依頼することをおすすめします。
相続した土地の分割方法
遺産に土地が含まれている場合、誰がどのように相続するかによってトラブルになる可能性があります。
遺産の分割方法を把握しておき、適切な方法でトラブルなく分割されることをおすすめします。
代償分割
不動産を相続する代わりに、他の相続人へ代償金を支払う分割方法です。例えば、3,000万円の土地を長男が相続する場合、次男へ1,500万円の代償金を支払うことで額面上は平等な相続を行うことができます。
ただし、土地の評価方法によって代償金の金額が変わること、土地を相続する人に代償金を支払うための資金が必要となるため、完全にトラブルを避けることはできません。
土地を相続しない代わりに代償金で納得してもらえるか、代償金を支払うことはできるのか、どのように土地の評価額を出せばよいのか話し合ってから代償分割を行いましょう。
換価分割
土地を売却し、その売却金を相続人で分け合う分割方法です。例えば、相続人が3人で土地を売却して3,000万円手に入った場合、1人1,000万円受け取れば、平等に分割することができます。
売却に成功すれば土地の固定資産税の支払いや管理義務が無くなるため、土地の売却を考えている場合におすすめします。
しかし、土地の場所や状況によっては売却に時間がかかり、売れても売却金が少なくなる可能性があります。また、売却益に譲渡所得税・住民税が課される可能性もあるため、資金をある程度用意する必要があります。
共有相続
土地を相続人で共有する分割方法です。例えば、兄弟2人で土地を相続する場合、土地の持ち分が2分の1ずつとなります。土地を平等に相続できるため、評価額や財産の分割方法などで揉める可能性が低くなります。
しかし、共有のまま相続が続くと相続人の数が増えていき、相続登記の手続きが複雑になります。また、土地を売却する際に所有者全員で手続きを行う必要があり、意向の違いや手続きの複雑さによって売却が難しくなる可能性もあります。
土地を相続したくない時の手続きについて
土地を相続せずに手放したい場合の手続きについて解説します。
相続放棄を行う
土地を相続したくない場合、自分のために相続の開始があったことを知った時から3か月以内に家庭裁判所へ相続放棄の申立を行います。相続放棄を行うと土地以外の財産も放棄するため、遺産内容と評価額を確認した上で申立を行うか判断されることをおすすめします。
相続放棄は個別に行うため、代表者ではなく、相続放棄する相続人が1人ずつ手続きを行う必要があります。
また、第1順位である子全員が相続放棄した場合、第2順位である親(直系尊属)に相続する権利が移ります。第2順位である直系尊属が全員相続放棄した場合、第3順位である故人の兄弟に相続する権利が移ります。相続放棄を行う前に相続人について調査し、相続放棄によって影響を受ける相続人へ事前に相談しておくとトラブルなく手続きを進められます。
土地を売却する流れと税金について
土地を売却する場合、どのような流れで行うのか、どのような税金が課されるのか解説します。
土地を売却する流れ
土地を売却する場合、まずは相続登記を完了させます。相続により、土地の所有権が故人から相続人へ移転しているため、故人から買主へ直接名義を変更することはできません。
相続登記を一から行う場合、1か月程度の時間を要するため、買主が決まってから相続登記を行うと時間がかかって買主が購入を断念する可能性があります。
また、分割方法で揉める場合や相続人が後から見つかった場合、相続登記にかかる時間が1か月を超える可能性があるため、先に相続登記を行ってから売却を進めることをおすすめします。
土地を売却してくれる業者を探す
相続登記が完了した後、相続した土地を売却してくれる業者を探します。業者によって売却価格や売却にかかる時間などが異なるため、業者選びが大切です。
業者を選ぶ際は、過去の実績や営業担当の良さ、地域性の理解など様々な部分を考慮することをおすすめします。インターネットの情報だけではわからないこともあるため、実際に相談しに行き、売却価格や営業担当の方を確認すると良いです。
土地を売却する際、印紙税と譲渡所得税・住民税が課される
土地を売却する際に課される税金としては印紙税と譲渡所得税・住民税があります。
印紙税は不動産売買契約書作成時に課され、契約書に記載されている金額によって課される税額も変化します。
譲渡所得税・住民税は不動産を売却した際の利益に課されます。売却益は【相続した不動産を売却した時の価格-(不動産を取得した額+売却にかかった費用+控除)】で算出されます。
不動産を取得した額は故人が取得した金額となりますが、不明な場合は売却価格の5%を取得費とすることができます。
相続財産を譲渡した場合の取得費の特例
土地を相続の際に相続税が課された場合、一定金額の相続税を不動産の取得費に加算することができます。
この特例は相続開始のあった日の翌日から相続税の申告期限の翌日以後3年を経過する日までに譲渡している必要があります。
また、この特例を適用するには確定申告が必要となります。
土地の相続でトラブルを避ける方法
土地の相続をめぐり、相続人同士でトラブルになってしまうことがあります。そのような事態を避けるための方法について解説します。
生前から土地の相続について話し合い、遺言書を作成してもらう
誰が土地を相続するのか決まっていないため、トラブルになるケースがあります。それを解消するには、生前から相続について話し合い、遺言書を作成してもらうことが大切です。
遺言書を作成してもらうことで誰が土地を相続するのかが明確になっており、被相続人の意向を反映することができます。
相続について家族で話し合うのはハードルが高い可能性もあるため、エンディングノートの記載から始めることをおすすめします。誰を葬儀に呼ぶのかなどから始め、徐々に財産の相続について聞くことで相続財産の話し合いや遺言書の作成まで進められる可能性があります。
土地を生前贈与する
土地を渡したい相手が決まっている場合、生前贈与を行うことで意思を反映させることができます。
相続時精算課税制度や暦年贈与などを活用することで、贈与税を抑えながら土地を贈与することが可能です。
土地の相続登記や相続税申告が必要なら『better相続』がおすすめ
土地を相続する際に必要となる相続登記や相続税申告を行う際は『better相続登記』や『better相続申告』がおすすめです。
専門家のノウハウをシステムに落とし込んでいるため、初めての方でも相続登記や相続税申告を自分で行うことができます。ガイドに沿って手続きを進められ、詳しい解説や抜け漏れ防止機能もあるため、独学で手続きを進めるよりも時間と手間を省くことができます。
利用前の事前相談なども行っていますので、こちらからお気軽にお申し付けください。
監修者情報
徳永 和喜(公認会計士)
高校卒業して就職後、一念発起して公認会計士試験合格。
2018年から株式会社better創業メンバー取締役としてbetter相続Webアプリケーション開発に従事。公認会計士/税理士とエンジニアを兼務しながら、相続税申告の案件にも携わる。
2022年10月、経営統合により辻・本郷ITコンサルティング株式会社の執行役員就任。better相続事業部長として、自分で相続税申告や相続登記を行う方へより良いサービスの提供を目指している。