生命保険で生前贈与を行うメリットや契約形態、保険の種類を解説
「相続対策として保険で生前贈与をする方法があるけど、どんな保険にすればいいの?」
「そもそも契約するだけでいいの?」
「親の相続だけではなくて自分の対策にも有効なの?」
そんな疑問をお持ちの方へ生前贈与を解説します。
また、メリットやデメリット、生前贈与を行える保険の種類についても解説していますので、相続対策の参考にしていただけますと幸いです。
目次
そもそも『贈与』とは
贈与をする人を「贈与者」、贈与を受ける人を「受贈者」と呼び、双方に「贈与をする・もらう」認識を持って、初めて贈与が成立します。
どちらか一方が贈与したつもり、もらったつもりでは贈与は成立しません。
贈与のやり方は2種類ある
実際に贈与をしようと思った場合、まずは贈与のやり方を決めます。
1.贈与契約を結ぶ
贈与をする上での「契約」を結んで贈与を行う方法です。
贈与者と受贈者それぞれの同意のもと、いつ・いくら・どのような形で贈与を行うかをしっかり決めて、それを「贈与契約書」に記しましょう。
贈与契約書は贈与の都度作成が必要で、同じものを2部作成し贈与者・受贈者それぞれが保管します。また、契約書ですので、双方の署名捺印若しくは記名押印を行いましょう。
しっかり契約書として残しておくことで後に相続が発生した際に、贈与をしていたことを証明することができます。
2.生命保険を活用する
生前贈与をするための生命保険に加入して贈与を行う方法です。これにより、贈与契約を結ぶのと同じ効果を得られます。
なお、生前贈与ができるような仕組みが施されている保険商品に限りますので、どの生命保険でも同じ効果を得られる訳ではありません。
生命保険を活用した生前贈与による相続税対策とは
前提として、相続税の課税対象となる財産を有効的に減らす(使う)ことが相続税対策になり、その一つの方法として生前贈与があります。
「生命保険」を活用した贈与には様々な効果があり、贈与に関する手間を省くことができます。
生命保険金の非課税枠との違い
非課税枠では、死亡保険金の内「500万円×法定相続人の数」の金額までは相続税の非課税対象となります。
他方で、生前贈与として活用できる生命保険で受け取る金額は「生存給付金」という種類で、被保険者(被相続人)が生存していることが条件として支払われる”給付金”となり、生命保険金の非課税枠とは別の扱われます。
被保険者(被相続人)が生存している間に生存給付金として贈与を行うことで相続税対策となります。
ただし、被保険者が亡くなり、相続が発生した時期によっては生存給付金として支払われていた給付金が「死亡給付金」として別に扱われます、生命保険金の非課税枠に該当することもあります。詳細はこちらをご参照ください。
生命保険を活用した生前贈与のメリット
預貯金や不動産を使っても贈与ができるのだから、わざわざ生命保険を契約することもないだろうと思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、生命保険でしか得られないメリットというのもいくつかあります。
①毎年の贈与契約書作成の手間が無くなる
「生命保険の契約をする=贈与契約を結ぶ」という扱いになるため、贈与契約書の作成が不要となります。
なお、贈与契約に該当する生命保険商品と該当しない生命保険商品があります。
②労力や手間がなくなる
ご自身で贈与を行う場合、銀行の窓口に足を運ぶか、インターネットバンキングにより毎年の送金をする必要があります。
生命保険商品を活用すると、毎年設定した贈与金額の範囲内で自動的に受贈者の銀行口座に振り込まれるため、送金のし忘れや銀行への足労、振込手数料がなくなります。
③認知症になっても契約が続く
認知症になった場合、片方だけが贈与の認識があって、もう片方に認識がない状態となるため、贈与契約が成立しません。
認知症・軽度認知症(MCI)(※)などにより判断能力が低下、若しくは喪失したと判断された場合、金融機関の取引全般(振込・預入・借り入れ等)ができなくなるため、贈与もできなくなります。(※軽度認知症(MCI)とは(厚生労働省))
しかし、保険契約においてはその心配がなく、契約時に定めた契約期間中は贈与が続くため、計画した期間の贈与の遂行も可能です。
④国税庁も認めている贈与の方法である
預貯金で決まった期日に決まった金額を定期的に贈与をしていくと、一定の金額を一定期間で贈与した「定期贈与」とみなされる可能性があります。
例えば、「110万円を10年間にわたり毎年贈与する」という贈与契約にすると、前提として1,100万円の贈与契約があり、これを分割して贈与するということになるので、1,100万円が贈与税の対象とみなされます。
したがって、1,100万円-110万円=990万円が課税対象となります。
しかし、生命保険を活用した生前贈与の仕組みは国税庁も認めている方法のため、定期贈与とみなされることはありません。
参照:保険料負担者(保険契約者)以外が受け取る生存給付金の課税上の取扱いについて
生命保険を活用した生前贈与の注意点
一方で、生命保険で贈与することの注意点もあります。
①生命保険金の非課税枠を超えて保険金を受け取ることになる可能性がある
契約期間中に契約者・被保険者である贈与者がお亡くなりになってしまった場合には、贈与の残存期間分の金額が死亡保険金(給付金)となり、相続人に支払われます。
そうすると、生命保険金の受取額が加入状況によっては非課税枠を超えた金額になり、超えた分の財産が相続税の課税対象になります。
②財産が増えてしまう可能性がある
受贈者が贈与者よりも先にお亡くなりになってしまった場合
受贈者が贈与者よりも先にお亡くなりになってしまった場合、贈与の残存期間分の金額を受け取る人を新たに決めるか、自分を受取人にする必要があります。
指定していた受贈者の他に贈与をしたい親族がいる場合はそのままその人を指定すれば問題ありませんが、他に贈与をする人がいない場合には自分で受け取るようにする他なく、結果として自分のところに財産が戻ってきてしまうということが考えられます。
加入した生命保険に積立金や配当金、繰り越し額がある場合
加入した生命保険に積立金や配当金、繰り越し額がある場合、あらかじめ定めた贈与期間が満了を迎え贈与が終えた後、保険商品によって「積立配当金」や贈与金額の繰越額が発生する場合もあります。
その金額が手元に戻ってきて、結果的にその分の財産が増えてしまうことも考えられます。
以上、生命保険を活用することの注意点をご紹介しましたが、必ずしも上記パターンに該当するとも限らず、相続税が増えたとしても、その分だけ保険金を多く相続人に遺すことができるため、相続発生後の葬儀費用やその他の諸費用の資金として別で受け取れたと思っていただくと良いでしょう。
生前贈与目的で加入する生命保険の種類
ここからは生前贈与目的で加入するのに望ましい「保険の種類」をご説明いたします。
「生存給付金付終身保険」で生前贈与を完全自動化
「生存給付金付終身保険」では、死亡した時に保険金が支払われる「死亡保険」に加え、被保険者が生存している限り支払われる「生存給付金」もあります。この生存給付金は家族に支払われるような形で契約を行うことができます。
「生存給付金付終身保険」に入るだけで贈与契約を結んだことにもなり、毎年の贈与契約書作成の手間や、銀行に足を運ぶ時間と労力、送金忘れ等が全て無くなります。また、贈与の課税方式の選択も可能です。
保険1つで生前贈与を完全に自動でできるのは、この種類の保険だけです。
生存給付金の支払い時期は選ぶことができ、契約が成立した次の日に受け取ることもできれば、契約から翌年以降の任意の日にすることもできます。
「生存給付金付終身保険」の仕組み
保険料は一括で払込み、それを原資に保険会社が一定の利率を用いて保険(保障)を設計します。それを取り崩す形であらかじめ決めた回数分の生存給付金を支払い、給付金の支払いが終わると同時に保険の効果はなくなり契約終了(満了)となります。
なお、生存給付金を支払っている間に被保険者が死亡した場合には、生存給付金の残存相当額が「死亡給付金」となり、法定相続人が受取人となっている場合には「生命保険金の非課税枠」の対象(※)となります。
※保険会社によっては非課税枠適用外の給付金としている場合もあります。非課税枠に該当するかは保険会社にあらかじめご確認ください。
この時の死亡給付金の受取人は、生存給付金と別の人を指定することもできるため、贈与したい人と、死亡保険金の非課税枠として受け取って欲しい人(法定相続人に限る)とを分けておくことができます。
「生存給付金付終身保険」の注意点
①課税方式の選択は正しく行う
特に相続時精算課税制度を選択する場合には、生存給付金を受け取った日を贈与日とし、受け取った年の翌年の2月1日~3月15日(贈与税の申告期間)に「相続時精算課税選択届出書」の提出が必要です。
仮に初めから相続時精算課税制度を選択するのであれば、第1回目の生存給付金の受取日の翌年の2月1日~3月15日に届出が必要となります。
2回目や3回目以降の受取から相続時精算課税制度を適用するのであれば、その受取に併せて届出を提出しましょう。
生存給付金の受け取り上限額の設定に注意
このような仕組みの保険商品は一般的に、生存給付金の受取金額があらかじめ決まっていません。これは、運用実績に応じて給付金額が変動したり、外貨建ての場合は為替の影響を受けるためです。
そのため、契約時に受け取り金額の上限を決めることで、毎年安定した受け取りを実現しています。
例えば、上限額を贈与税の基礎控除額である110万円に設定することで、暦年課税においても相続時精算課税においても、毎年非課税で贈与を行うことが可能となります。
贈与資金をすぐに使って欲しくない場合には「個人年金・養老保険」が有効
贈与したお金を将来のために使ってほしい場合、贈与したお金をそのまま「個人年金・養老保険」の保険料にあてるという方法があります。
契約者・被保険者は受贈者である子や孫にして、贈与者は生存給付金付終身保険で贈与を行います。そして、受贈者はそのお金を毎年の保険料として支払います。
こうすることで、子や孫の将来のために贈与することができます。
個人年金保険の仕組み
一定期間保険料を支払い、指定した年齢から払込んだ保険料総額に応じた金額が毎年受け取れる貯蓄型の保険です。
養老保険の仕組み
契約時に定めた期間は死亡保障としての効果があり、定めた期間を終えて被保険者が生存していた場合、死亡保険金と同額の満期金を受け取れる保険です。
「個人年金・養老保険」の契約形態
個人年金保険も養老保険も、共通して下記のような契約形態にしましょう。
- ・契約者・被保険者・年金若しくは満期金の受取人:全て受贈者
- ・保険料:贈与された金額
- ・保険料の払い方:毎年1回の支払いで済む「年払い」を選択する
- ・払込期間:贈与をしようと思っている期間に合わせる
「個人年金・養老保険」の注意点
個人年金・養老保険は、贈与が仕組化されているものではありません。そのため、別途贈与契約を締結する、もしくは生存給付金付終身保険を用いて贈与されたお金を保険料とする必要があります。
また、被保険者になる受贈者の年齢や持病の有無によってはそもそも保険に入れないということがあります。保険会社と商品によって加入対象となる年齢や健康状態が異なるため、詳しくは提案を受ける際に相談しましょう。
なぜ『贈与』が相続対策に有効なのか
贈与は相続税対策において重要な役割を担っています。
相続税は、相続財産総額が相続税の基礎控除額である、「3,000万円+600万円×法定相続人の数」を超えた場合に課せられる税金です。財産が多いほど、家族が納める相続税も多くなり、遺産があまり残らなかったということも考えられます。
生前から財産を贈与することで相続財産が減り、家族が相続税を納めても手元にしっかりと財産が残る状態にすることができます。
贈与の税制の種類
贈与の税制は「暦年課税制度」と「相続時精算課税制度」の2種類の制度があります。
令和6年1月1日に施行された法改正により、贈与税と相続税の課税方式が一部変更されました。これを理解しないまま贈与を始めてしまうと、相続税対策にならない可能性があります。
1.暦年課税制度
1年間に受けた贈与金額の合計額に応じて、贈与税の申告・納税を行う制度です。
贈与金額が110万円(贈与税の基礎控除額)を超える場合、受贈者が贈与を受けた翌年の2月1日~3月15日までに居住地の所轄税務署に贈与税の申告を行います。贈与金額が110万円を超えない場合は申告は不要です。
なお、贈与者と受贈者の年齢・続柄によって【特例贈与財産(特例税率)・一般贈与財産(一般税率)】という区分があり、それぞれで税率が異なります。
(参考)贈与税の計算と税率(暦年課税)
亡くなる直前の贈与は相続税の対象になる
暦年課税制度を選択して贈与を受けた人は、原則として相続時にその人の相続財産(相続税の課税価格)に、相続が発生した日から起算して7年前(※)までに受けた贈与金額を加算する必要があります。これを「暦年贈与加算」といいます。
※令和6年1月1日以降に贈与された財産については、その加算対象期間が7年以内となりますが、被相続人の相続開始日に応じて加算対象期間が異なります。(下記表参照)
なお、加算対象期間内に贈与されたものであれば基礎控除額110万円以下の贈与財産や死亡した年に贈与されている財産の価額も加算することになります。暦年課税制度を選択して贈与を行う場合は、なるべく早いうちから贈与を始めましょう。
詳細は以下からご参照ください。
No.4161 贈与財産の加算と税額控除(暦年課税)
2.相続時精算課税制度
贈与財産の全額を相続財産に加算する必要があるものの、贈与金額の総額が2,500万円までは非課税で贈与ができる制度です。2,500万円を超えた金額に対しては、一律20%の税率で税金がかかり、贈与税の申告・納税が必要です。
なお、令和6年1月1日以後の贈与により取得した相続時精算課税適用財産について、相続時精算課税に係る基礎控除額(110万円)が新設されました。
贈与を受けた年分ごとに、その相続時精算課税適用財産の贈与時の価額の合計額から、基礎控除額である110万円を控除した残額が加算対象となります。
ただし、有価証券や不動産を贈与された場合、相続時の財産に加算する価額は贈与時の価額で加算する必要があります。
生前贈与保険の相談を行うなら『better相続生前対策』がおすすめ
better相続生前対策の保険相談では、実際に相続税申告の現場で申告実務を行っていた相続診断士が、お客様にあった「相続対策に特化した保険」をご提案いたします。
必要な保険を必要な分だけご案内しているため、過度な加入はお勧めいたしません。申告実務で培ったノウハウがあるからこそ、お客様の相続パターンに応じたご提案を実現しております。
相談は無料で受け付けておりますので、お気軽にご相談ください。